東京・高円寺で長く暮らす山崎武志さん。大手製薬メーカーに勤務して約35年のベテランだ。仕事一筋の日々で、営業・経理・IT・工場勤務など様々な業務を経験してきた。だが、最近は杉並区各地のボランティア活動に関わるボランティアマスターとして地元で知られている。仕事をしながら、ボランティアに注ぐその熱意のわけに迫った。

山崎武志さん

会社で着実にステップアップして管理職になった山崎さん。関東各地の拠点で働き、時には高円寺の自宅から平塚まで片道2時間ほどかけて通うことも。そんな中、50歳の時に本社勤務となり、長時間通勤から解放され、一気に時間が出来た。6年ほど前のことだった。

「1日あたり4時間くらい余裕ができました。そこで、何かしようと思ったんです。ちょうどそんな時に、ある著名な方が政治塾を始めました。私は決して政治家になろうとしたわけではなく、世の中を変える原動力とは何かを学びたいと思って参加したんです。入ってから、政治家志望の人が大半の集まりだと知って戸惑いましたけどね(笑)」

だが、そこで様々な地域で活動する人々と繋がることができたという。そんな中で、杉並区在住の塾生が、地盤も看板も何も無い中、政治家に挑戦することを知った。何か力になれたらと思い、初めてボランティアに挑戦した。しんどい場面も少なくなかったが、なんとか応援していた人は当選することができた。

「選挙が終わって、政治家を応援した責任について考えるようになりました。応援した以上、その政治家が地域のためにならない行動をしたら苦言を呈さないといけない。でも、自分は地域のことをあまり知らない。これでいいのだろうか。そう思いました。」

でも、地域と関わる方法を何も知らなかった山崎さん。まず最初に見つけたのは高円寺阿波踊りのボランティア募集の立て看板だった。とにかく地域と関わりたいと応募して参加した山崎さん。そこから怒涛のボランティア活動が始まる。

「高円寺4大祭りは全て参加しましたね。あと、荻窪音楽祭や西荻窪の風の舞。方南町の日曜祭りや代田橋の沖縄タウンの夜市。昨年は阿佐ヶ谷のジャズストリートにも。本当にたくさんのボランティアに参加しました。」

杉並区が行う地域大学や大人塾といった講座にも積極的に参加。参加すればするほど、また新たなボランティアに誘われる。そうして、地域でのつながりがどんどん広がっていった。

「思い出深いのはやっぱり高円寺フェスですね。台風が直撃して、一生懸命雨風に打たれながらながら、運び出した机をすぐに片付けて、濡れた机を拭いて、元の場所に運んだこともありました。また、実行委員に初めてお誘いいただいたイベントでもあります。」

ボランティアは学生や、現役をリタイアされた方が老後に取り組むケースなどが多く、現役世代が仕事と両立して取り組むことは、一部企業が会社としてボランティアに参加するケースを除くと、まだまだ珍しい。しかも山崎さんは、単なるボランティア参加者だけでなく、実行委員メンバーとしてボランティア活動を運営する側にも回っている。

高円寺プラフェスにて

「私は会社勤めしながらボランティアをすることができて良かったと思います。ボランティアを通して学ぶことは多いです。イベントの進め方のようなテクニカルなことももちろんですが、職場では得られないななめの関係を得られることは大きいです。ずっと会社勤めしていると、上司と部下というタテの関係と、同期や同僚というヨコの関係が明確です。でも、地域はそうではない。年長者だから、有名企業だから、そんなものは通用しない。謙虚で柔軟になるし、自分を見つめ直すきっかけにもなります。」

今年2月の熱汁祭で、通算100イベント目のボランティアだった山崎さん。だが、途中新型コロナウイルスの影響で多くのイベントが中止になり、ボランティアの機会が失われた。また、予期せず福島県いわき市へ転勤することにもなった。だが、山崎さんは迷わずボランティアを続けた。いまは、週末にいわきから杉並まで戻ってボランティアをしている。

熱汁祭スタッフの皆さんと

「ボランティアがちょうど楽しくなってきたタイミングだったので、ここで辞めたくなかったんです。でも、コロナの影響でオンライン会議が普及したのはある意味助けられましたね。講座や会議はオンラインで参加できますし。

ボランティアをしたことで、地域に詳しくなったかは分かりません。でも、いかに多くの方々が関わって地域が成り立っているのか、ということはよく分かりました。これからもボランティアを続けたいし、多くの方にボランティアを始めてもらえるきっかけや、ボランティアを楽しめる環境作りに貢献できたらと思います。」

現在、山崎さんは杉並区の地域大学の講師として、ボランティアの始め方についての講演をしたり、その取り組みがFMすぎなみで紹介されたりするなど、働きながらボランティアをするロールモデルとなっている。

地域のゴミ拾い(グリーンバード高円寺)にも参加

また、高円寺フェスの実行委員として、ボランティアスタッフの募集やマネジメントを担当している。どうやったらボランティアスタッフが楽しくボランティアをできるのか、ご自身の経験に加え、ボランティア検定を取得するなど熱心に学び、考えている。

今年の高円寺フェスは、10月28日〜29日に開催される。ボランティアにちょっと興味がでたみなさん。ものは試しに山崎さんと初めてのボランティアをやってみるのはいかがだろうか。

この記事の写真一覧はこちら