見た目ではわからない病気を抱えている人は少なくありません。まだ治療法の確立がされていない難病もあり、日々模索しながら過ごされている方もいます。

今回取材した清水さんは、スティッフパーソン症候群を抱えています。スティッフパーソン症候群は、体幹を主に間歇的に筋硬直や筋痙攣が発生し、全身へと症状が進行する疾患です。

清水さんに、自身の病気や活動などについて話を聞きました。

現在の活動について

スティッフパーソン症候群(以下、SPS)は、日本において100万人に2人程度の難病です。
清水さんは現在、同じ病気の患者さんや地元の難病患者の交流会に参加しています。SPS患者会である「スティッフパーソンみんなの会」は、SPSの認知度向上と、指定難病化を目的に活動をしています。患者交流会では各自の現状報告や治療の内容、自身の経験などの情報を交換したり、学会ブースなどで医師への啓蒙活動をしたり、SPS研究班の先生方とも連携し情報を交換し合うなどしています。

交流会の様子 ※二次配布、転送、再利用の禁止(清水さんより提供)

スティッフパーソン症候群について

SPSが起こす症状は個人差がありますが、多くは筋肉の硬直、こむら返りの症候群症状が全身に起こります。軽い攣(つ)りは身体を動かしたら常に大なり小なりはあるといいます。また音光によって攣りなどを誘発されます。

ー日常生活において、困難なことなどを教えてください。
人混みは基本苦手です。また日常生活ではテレビの突然の音光、インターホーンなどからも誘発されます。呼吸器にも影響が出て、呼吸器が必要な方もいます。基本的に、歩行は攣りながらになるため、常に激痛との闘いです。そのため、週に2度程ブロック注射とトリガーポイントの注射40箇所から50箇所程を打って痛みを和らげています。これらのおかげで、少しでも快適に過ごせる時間をつくれます。

現在、清水さんが服用している薬(清水さんより提供)

ースティッフパーソン症候群と診断される前、どういった症状がありましたか?病院を受診するまでの経緯について教えてください。
元より筋肉痛や足が攣ることはよくあり、偏頭痛もちでもありました。平成22年の1月半ばに、椅子から立った際に攣りが足から全身に広がり、そのまま倒れてしまいました。その後、妻が仕事から帰宅し、救急車にて自宅近くの大学病院に搬送。そのときは脳梗塞、くも膜下出血などの疑いでした。
しかし、検査をしてもどれも該当せず、その日たまたま夜勤勤務されていた神経内科の医師にSPSの症状に似ていると言われ、そのまま検査をして3ヶ月後には確定診断がつきました。他の患者さんは3年や5年、10年と確定されないことも多いため、適切な治療が受けられていないのが現状です。

ースティッフパーソン症候群と診断されたとき、どういったお気持ちでしたか?差し支えなければ教えてください。
確定診断がついたときは、正直すべて嫌になってました。発病当時は飲食店で勤務しており、まだまだこれから上を目指して頑張りたいときでもあったのです。自宅は買って半年、車は買って4ヶ月、この先どうしたらいいのだろかと思いました。実際それまでは難病などには無縁だと思っていたので、当時は100万人に2人と言われても正直よくわかりませんでした。
入院中に色々調べて希少なんだと知り、その後は病院とも話し合い、自分のデータは提供することを了承しました。
それまで仲良くしていた方も自然と去って行き、当時は人まですべて失ったと思いました。病気になった現実を見た感じがして、すべてがマイナスに感じていました。

心境の変化

ー発病後、趣味で繋がった仲間との交流もあったようですが、交流会で同じ病気の方と出会ったことでどういった心境の変化がありましたか?
現在は、趣味の車や愛犬たちと楽しくやっています。病気になり人を失った感が強かったのですが、今は25年ぶりに再会した車仲間や犬仲間に囲まれて楽しくやっています。
やはり価値観が合う仲間と一緒だと病気でもとても楽しく過ごせます。実際に病気になって悪いこともありますが、考え方次第ではよいこともあるので、なるべくよい考え方をするようになりました。同じ病気の方との交流会に参加させていただき、自分の経験なども少しは皆様のお役になるのかなと思いました。
今は自分の経験やわかることはどんどん発信したいと思っています。共感できる仲間の言葉は心の底から嬉しいです。
現在は、自身のメンタル管理も兼ねて「メンタルアドバイザー」の資格を取得しました。

清水さんが飼っているわんちゃんたち。ミニチュアピンシャーのちょこちゃん、イタリアングレーハウンドのもなかちゃん。ちょこちゃんは発病事からいて清水さんの帰りを待っていました。(清水さんより提供)

清水さんが飼っている猫のミントちゃん(清水さんより提供)

ー病気について知ってほしいという思いがあると話していましたが、その理由について教えてください。
当然希少な病気なので、医療関係者や医師も知らない方は多くいます。適した薬もまだまだ少なく、患者数が少ないので仕方がないこととはいえ、それではせっかく今いる患者のデータがあっても、同じ病を抱える方に適切な治療ができません。また、このように少ない難病は世間には受け入れてもらえないのも現実です。そのため、世間にも目に見えない病気が多数あることも知ってほしいと思います。

ー同じ病気の方にどういったことを伝えたいですか?また、どういった活動を今後していきたいですか?
私も1年以上寝たきりになり、立つことや食事、トイレ、車なんてもってのほかというところまでいきました。しかし、早期に適切な治療などしていけば、進行を遅らせることができると信じています。患者自身も勉強して情報交換をすることで、患者と医師で手探りで適切な自分に合う治療をしていくといいのかと思います。そこには自分のわからない保険の制度などもあり、うまくいかないこともあると聞いています。
今後は少しでも知名度上げていき、障がい者の働き方などにも関わっていけたらと思っています。仕事に復帰したいのに、情報が少ないことでなかなか復帰できないといったこともあります。知名度を上げて正しい知識を広め、偏見のようなものもなくなってほしいです。

「医療関係者様、サポートしていただいた方々、妻をはじめとした家族、そして 多くの仲間に今は感謝の気持ちでいっぱいです」と話す清水さん。今後、病気の知識が正しく伝わり、治療も発展していくことを願っています。

【参考資料】
MSD マニュアル『スティッフパーソン症候群

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