ダンサーであるAKiHAさん(Instagram:togolife.0126)は、出産後に「安室奈美恵さんの隣で踊りたい!」という夢を実現した方。そして3人の男の子を持つ母でもあります。

AKiHAさんの長男は、cask遺伝子異常症という病気を持っています。長男は意思の疎通が難しく、様々なサポートが必要です。
AKiHAさんが3人の母として、重度障がい児の母としてSNSで発信しているのは、命の大切さや普段見過ごしてしまう小さな幸せについてです。

しもやけを防ぐために帽子などで温めます(@togolife.0126さんより提供)

「寒い」を伝えられず体温33℃になってしまうことも

AKiHAさんの長男は中学2年生。cask遺伝子異常症という病気のため、意思の疎通が難しく「寒い」と伝えられず、体温が33℃まで下がってしまうこともあります。

理由を主治医に確認したところ、肢体不自由のため自分で運動することができず、体温が上がりづらいのではないかと回答されたそうです。「健康な人のように、酸素が全身に巡っているのかもわからない」とAKiHAさんは話します。冬になると霜焼けを手足に起こすことも多いので、帽子やレッグウォーマーなどで体中を温めています。

体温が上がらなくても食事は取れていた(@togolife.0126さんより提供)

同じ病気を持つ子は国内に数十人

生まれてからの成長速度が遅かった長男は、様々な病院で受診しても病名が分かりませんでした。遺伝子解析を行い、長男が5歳になった時に、やっと病名が分かったのです。

CASK遺伝子異常症は、遺伝子に異常がある病気で非常に珍しく国内には数十人ほどしかいません。
男の子でこの病気にかかることは本当に珍しく、多くの場合はお母さんのお腹の中で亡くなってしまうことが多いそうです。

男の子で今、この病気を持っているのはAKiHAさんが知るかぎり国内で2人だけ。そのため長男の病名が判明したとき「奇跡の子」とお医者さんから言われたそうです。

「奇跡の子」と共に生きる

長男は、遺伝子異常の他に、側わん症、小頭症という病気を持っています。自分ひとりで座ることができないため、普段は特注の椅子に座っています。

意思の疎通はできませんが、美味しいものを食べたときに口を開けるのが早かったり、音楽やキラキラ光るものが好きなので喜んで笑顔になったり反応を見せてくれるようです。

しかし「寒い」や「ここが痛い」といったメッセージがわかりにくいのが大変だとAKiHAさんは話します。

どこがつらいかなどの訴えに気づくことが難しいため、少しでも「普段と違うかも?」ということに気づいてあげられるように気をつけているAKiHAさん。
インフルエンザで入院した時も、熱はなかったのでわかりづらく、いつも以上に日中寝ていたことと呼吸の仕方が違うなと思い受診されたそうです。

息子に障がいがあるとわかったとき、最初は受け入れるのが難しかったそうです。
しかし今、AKiHAさんは「障がい児育児を楽しむ」というタイトルでSNSに投稿しています。

長男は、胎児の時点で亡くなる可能性が高い「奇跡の子」。
AKiHAさんを選んで生まれてきてくれた長男さんの手となり足となり、一緒に生きていけば決して不幸ではないと思うようになったそうです。

>SNS投稿を通じて障がい者に優しい世の中にしたい

「リアルな発信をして世の中を変えたい」という思いで発信をしているAKiHAさん。長男は普通の食事形態では食べられません。ミキサーにかけて、ペースト状にする必要があります。しかしペースト状にしてくれる外食店は、ほとんどないため「ペースト対応しますよ」と店員さんの一言があれば、かなり楽になるとAKiHAさんは話します。

また、美容室も同じ。車椅子のままでカットできる美容室があれば、もっと多くの人が助かるはず。新幹線に乗る時も、健康な人はスマホでチケット購入できます。でも車椅子に乗っている人は事前に障害手帳を持って緑の窓口へ行き、長蛇の列に並ばなくてはいけません。

AKiHAさんは「私が今困っていることや不満をSNSで発信することで誰かの目に留まり、商品開発や行政が動いてくれれば。とても大きな夢だと思いますけど、可能性がゼロでないならやりたいと思います」と話します。

障がいが身近でない人たちへ伝えたいこと

自分が健康であることを、自分にも親にも感謝してほしいというAKiHAさん。
障がいのある人を目にした時に、勇気を持って手を差し伸べてほしいと話します。
もし直接できなくても、SNSにコメントしてもらうだけでも救われることもあるそうです。

「皆様が気づかなかったことに気づけたり、今後生きていくうえで何かを発見できるきっかけになれたら嬉しい」とAKiHAさんは話してくれました。「安室奈美恵の隣でダンスしたい!」という夢を努力で実現したAKiHAさんの挑戦は、まだ始まったばかりです。

【参考資料】
小児慢性特定疾病情報センター

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