コロナ禍で離れて暮らす家族となかなか会えず、寂しさやもどかしさを感じた人も多いと思います。とくに高齢者が暮らす老人ホームでは面会も長い間制限されてきました。そんななか、ある養護老人ホームが投稿した動画が話題になっています。
久しぶりに再会した姉妹。お姉さんのうれしそうな顔と妹さんの涙、そしてお互いを気遣いあう言葉に「素敵なご姉妹ですね」「泣いちゃいました 長生きして欲しいです」といったコメントが寄せられています。

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この動画を投稿した、養護老人ホーム「美吉野園老人寮」の田中さんに当時の様子を聞きました。

『隣の施設に妹さんがおられます。感染対応により久しぶりになりましたが、姉104才、妹94才の姉妹が再会されました。』(美吉野園老人寮より提供)

―ふたりはどれくらいぶりに再会したのですか?
約3か月ぶりです。実は昨年11月にも会っていて、そのときはコロナになって以来の再会なので本当に数年ぶりでした。妹さんは隣接する美吉野園特養寮に入られていて、コロナ前はしょっちゅうお会いになっていました。お姉さんも今より元気だったので、ご自分で会いに行ったりもしていました。

昨年11月の再会の様子。『隣の施設に妹さんがおられ、差し入れを届けました。いつでも行き来出来れば良いのですが久しぶりの再会になりました。』(美吉野園老人寮より提供)

―今回の再会はどういう経緯で実現したのでしょうか?
おふたりは6人きょうだいで、お姉さんが年の離れた妹さんのことをいつも気にかけていらっしゃるんです。施設内に売店があるのですが、そこでお菓子などを買ってはよくスタッフに頼んで妹さんに届けていました。今回もまた妹さんへお菓子を届けてほしいということだったので、それならご自分で渡せるようにとこういう場を設け、再会に至りました。

『隣の施設におられる妹さんに持って行くクッキーを買いに行きました。お金を持たずに。近々、一緒に届けに行きたいと思います。』(美吉野園老人寮より提供)

―お姉さんの笑顔が印象的ですね。
お姉さんは104歳で、当施設では最高齢です。普段からとてもほがらかで、自分のことより周りのことを気にするような、とても明るい方です。

お別れのときのお姉さんは寂しそうな笑顔。『104才の姉、94才の妹、姉妹が久しぶりに再会されて別れをおしまれるシーン』(美吉野園老人寮より提供)

―インスタグラムはいつから運用していますか?
美吉野園老人寮単独のアカウントとしては約1年前から運用しています。今、介護現場は本当に人材が不足していて、とくにコロナ禍になってから施設が閉鎖的になり、一般の方から遠いものになってしまいました。SNSを使って施設のなかをオープンにすることで、福祉や介護に興味を持ってくれる人が一人でも増えればという思いで続けています。

利用者の普段の暮らしや介護の仕事についても投稿しています。『きんかん買ってきました。懐かしかったようです。持って帰り食べずに置いてありました。においを楽しまれてます。』(美吉野園老人寮より提供)

―今回の投稿に対する反応はとくに大きいですね。
そうですね。普段の投稿でもいろいろコメントをいただいて、とくにご家族の方からは様子が分かってうれしいという声もいただいています。今回の投稿がとくに反響があったのは、美吉野園だけではなく日本全国いろいろな場所でこういうことが起こっていて、同じような思いをされた経験があったり共感される方が多かったからだと思います。

『お正月に食べたい物はなんですか?』(美吉野園老人寮より提供)

―今後インスタグラムでどんなことを発信していきたいですか?
職員数も限られているので細かい対応がいつもできるとは限らないですが、できる範囲で、一日を楽しく穏やかに過ごしてもらえるようなお手伝いをしていきたいし、そんな一場面を載せていけたらと思っています。また、これを見て介護の仕事に興味を持ってくれる人が増えたり養護老人ホームという施設の認知度が上がっていくといいですね。

今回投稿された動画を見て、お姉さんのファンになった人も多いのではないでしょうか。今後も元気で楽しく暮らす様子を見せてほしいものです。

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