“正月の遊び”といえば、何を想像しますか?「凧揚げ」を挙げる人も多いのではないでしょうか。
香川県に昔からある「讃岐和凧」は、迫力のある武者絵と竹組みが特徴です。だるま型やつりがね型、ます型などの形があり、風に吹かれて空を舞う際には風の振動で凧は“うなり”を上げます。
今回は、讃岐和凧を作っている木下信一さんに、讃岐和凧の魅力や今後の夢を語ってもらいました。

躍動感のある武者絵が特徴。形も大きさもさまざま。

ー讃岐和凧を知ったきっかけは?
父親がずっとこの讃岐和凧を作ったり、飛ばしたりしていたので身近な存在でした。小学2年生のときから凧作りのお手伝いをしていたんです。いつかは自分の趣味にしてやってみたいなと考えていたこともあり、3年前から始めました。

ーどうやって作るんですか?
まず和紙に下絵を書いて、そこに色を塗っていきます。骨組みとなる竹は市販のものもありますが、私は竹を削って自作しています。太さや長さがいろいろ必要だからということもありますが、自分で作るほうが愛着が湧きますしね。最後は和紙に竹を貼って糸を調整して完成です。

木下さんは下絵から色つけまですべて自分で行なっています。

ーこんな大きなものが空を舞うんですね。
冬の風は大きな凧も上がりますが、夏場の風はそこまで強くないので小型の凧を飛ばします。微風用の凧があるんですよ。

凧は風を受けたまま静止。特有の音を上げて舞っています。

ー季節によって凧を変えるんですね。
そうなんです。四季によって風に特性があるので、それに合う凧を選んで楽しみます。

ーすぐに上がるんですか?
はじめは失敗の連続でした。上がらないんです(笑)。これは凧揚げの技術というより製作段階における糸の調整など技術の問題。何枚も作るうちに飛ばせるようになりました。それと、上がるだけではなく“うなり”と呼ばれる音が鳴るものでなければいけません。そういう意味でも納得のいくものを作れるようになるまでは時間を要しましたね。

ー讃岐和凧の魅力って何ですか?
自分の描いた絵が大空を舞う姿を見られることですね。“空に舞う”と言いますが、空を動きまわるのではなく、風を受けてじっとしている状態をキープしているのがいいんです。そこに“うなり”が加わると迫力が増します。それに、この“うなり”は魔除けの意味もあるそうです。そういった“いわれ”も讃岐和凧の魅力だと思います。

近所の子どもたちに教えることも。

ー今後の夢を聞かせてください
讃岐和凧を作る人も高齢化が進み、45歳の私が最年少です。昔からある文化ですから後世に繋いで行けたらいいですね。私のところに来てくれたら、作り方も飛ばし方も教えます。何より自分が作ったものが空を飛ぶって達成感を感じられますよ。

竹の裏にビニールのテープがありそれが”うなり”をあげる仕組み。

郷土の和凧「讃岐和凧」。正月に河川敷などで上がっているのを見かけるかもしれません。

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