全国の寺社仏閣で行われている花手水(はなちょうず)。参拝の前に水で手や口を清めるための手水舎をたくさんの花で飾り付けたもののことです。感染症対策で手水舎の利用を中止する施設が多いなか、少しでも参拝者の心が清められればという願いから花手水を取り入れる寺社が増えています。香川県で花手水を実施している寺、善通寺市の甲山寺で話を聞きました。

コロナ禍で増えた花手水

甲山寺 企画・広報担当の杉本理恵さん

「2020年、コロナという経験したことのない事態が起きて、それまで普通だったことがまったくできなくなりましたよね。お寺に関していうとお遍路さんの団体バスもまったく来なくなり、初詣さえも自粛、あるいは分散ということになりました。そんななかでお寺に何ができるかと考えたときに、分散参拝をお願いするのであれば、いつ来てもお正月の華やかな雰囲気を感じられるようにと思ったのが、花手水を始めたきっかけです」

甲山寺の花手水

甲山寺で最初に花手水を実施したのは、2020年の年末から翌1月末にかけて。参拝者からも好評だったことから、2回目以降は周辺の寺と合同で「四国霊場七ヶ所まいり 花めぐり」と題して行うようになりました。

季節やテーマに合わせたアレンジが楽しめます

「今回の“花めぐり”は、11月6日から21日までの16日間。七五三の時期ということもあって、花手水も子どもさんが楽しめるようにと考えました。興味をもったら何でも触ってみたくなる子どもさんたちのために、今回は上から造花をぶら下げて触って楽しんでもらえるようにしています。晴れ着で参拝されたときにも、ぜひ一緒に写真を撮ってほしいですね」

上からぶら下がっているのはすべて造花

また、甲山寺はウサギと縁のある寺でもあります。ご本尊「薬師如来」の脇仏、「月光菩薩」が左手に持った月から飛び出したと言われるウサギ。手水舎の脇には親子ウサギの像が据えられ、願いを込めてこの像をなでると「飛躍」「運気上昇」「円満な人間関係」「子宝」「安産」などさまざまな御利益があるとされています。甲山寺ではウサギを模した御朱印や御守りなども数多く扱っています。

親子のウサギも花で飾られています

「七ヶ所まいり」で願いが叶う

実は「四国霊場七ヶ所まいり 花めぐり」を行っている寺は、江戸時代から「七ヶ所まいり」が行われている四国霊場札所の寺。71番弥谷寺、72番曼荼羅寺、73番出釋迦寺、74番甲山寺、75番善通寺、76番金倉寺、77番道隆寺の7つの寺を参拝すると、四国霊場八十八ヶ所を参拝したのと同等の御利益が得られ、願いが叶うと言われています。それぞれの寺ごとに活ける花や演出はさまざま。「七ヶ所まいり」には専用の御朱印帳があるので、花めぐりをしながらの御朱印集めも楽しめそうです。

曼荼羅寺の花手水

出釋迦寺の花手水

「四国霊場七ヶ所まいり 花めぐり」、11月の開催は21日まで。この期間に見られなかった人は、次は12月29日から2022年1月30日まで開催予定なので、ぜひ足を運んでみてください。

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