香川県の名物といえば、讃岐うどん。シンプルなかけうどんやざるうどん、釜揚げうどんなどさまざまなバリエーションがありますが、冬にだけ味わえるしっぽくうどんというものをご存知でしょうか。

讃岐の冬は、しっぽくうどん

しっぽくうどんの具材は店によってさまざまですが、煮込んだ根菜や鶏肉などの入った出汁がかかった、体の中から温まる味わい深いうどんです。寒くなってくると「しっぽくまだ?」「今年はいつから出すの?」と心待ちにする客も。そしてお品書きに「しっぽく始めました」と出ると、今年も冬が来たなあと季節の変化を感じながら味わうのです。

とにかく具だくさんなしっぽくうどんが話題

香川県民には「里芋が入っているのが好き」とか「野菜を大きくカットしているのが好き」など自分好みのしっぽくうどんのスタイルがあります。そんななか、誰もが驚く山盛りのしっぽくうどんを出しているのが、高松市にあるはな庄うどん。丼の上に具材が山のように盛られていて、麺はおろか出汁さえも見えないほどです。なぜこんなスタイルのしっぽくうどんになったのか、店主の川西一真さんに聞きました。

店主の川西さん。約20年前にはな庄うどんをオープン。

―お客さんからの要望に応えるうちにだんだんと大盛りになっていったんですか?

そうじゃなくて、最初からこのスタイルです。うどん店をするにあたって、自分自身が満足できるメニューを出したいという思いがあって。僕だったらしっぽくうどんを頼んで具が少しだけだったら物足りないなと思うので、それで文句なしの山盛りスタイルで提供しているんです。

具材は、大根、ニンジン、油揚げ、親鳥、若鳥、里芋、シイタケ。こんなに具だくさんで税込み680円

―食べきれない人もいるのでは?

お客さんの目の前で盛り付けるので、高齢の方や女性のお客さんには「いいところで止めてくださいね」と声をかけてから盛り付けるようにしています。それでもやっぱり残してしまうお客さんもいますね。

しっかり煮込んでいるので根菜もトロトロに。噛むとジュワっと熱い出汁がしみ出てくる。

―どのくらいのペースで仕込んでいるんですか?

大小2つの寸胴鍋があるんですが、その2つを交代で使いながら週に3~4回炊いています。平日は小さい鍋でもギリギリもちますが、土日は全然足りないですから。

鍋いっぱいの具材を約2時間かけて炊く。こちらは小さい方の鍋。

盛り付けにもコツがある

この山盛りのしっぽくうどんを実食させてもらうことになり、盛り付けの様子も見せてもらいました。

まずお玉1杯目。汁が入りすぎないように穴の開いたお玉を使っています。一般的なしっぽくうどんの具の量はこれくらい。

お玉2杯目を乗せたところ。すでに山盛りです。

3杯目。もうこれ以上は無理でしょう、と思いきや…。

ダメ押しの4杯目は、お玉で上から軽く押さえるように。

上から見ても、出汁はほとんど見えません。

これだけたくさんの具材をこぼれないように盛り付ける、さすがの技術でした。
実際に食べてみると、上の方は出汁に浸かっていないのに大根も里芋もアツアツで、野菜と出汁のうまみが口いっぱいに広がります。一つひとつの具材が大きいので食べ応えもあり、麺にたどり着くまでにお腹がいっぱいになるのではと不安になりながらも食べ進めていくとやっと麺が出現。ここまでにかなり時間がかかっていますが、具でフタをされていたので麺も出汁もまだ温かく、野菜の甘みがしみ出した出汁とコシのある麺が絶品でした。ただ、あまりにも量が多くて完食は断念。次は朝ごはん抜きでお腹を空かせて来よう、とリベンジを誓ったのでした。

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