「結局は、好きが高じて会社まで作っちゃったんです」と笑顔で話すのは、株式会社さくらぎさくら、代表取締役の立石有香莉さん。5年弱勤めた企業を退職し、オリジナルの室内用トランポリン“ゆかぴょん”の企画・販売をしています。なぜ、会社を辞めてまでトランポリンづくりに励む選択をしたのか、立石さんに話を聞きました。

ストレスによる暴食で体重が10kg増加 

立石さんがトランポリンに出会ったきっかけは、仕事のストレスによる暴食で体重が10kg増加したことでした。

暴食が原因で太っていた頃(立石さん提供)

「当時、ダイエットをしてはリバウンドする日々を繰り返していたんです。気がついたら体重が10kgも増えてしまい、体育教師だった母にアドバイスを求めたところ、全身運動になるトランポリンを勧められました」

これまで、運動が続かなかった立石さんですが、「トランポリンはすごく楽しかったから、継続ができた」と振り返ります。同時に食事にも気をつけるようになった結果、体重が元通りになり、トランポリンの虜に。立石さんの中でトランポリンが、“人生で買ってよかったものNo1”になりました。

「今やらなかったら、一生やらない」

そんな立石さんが、自身でトランポリンの企画・販売を志す転機になったのは、会社でのスピーチでした。

「朝礼で1分間、面白い話をしなければならないという日がありました。しかし、私は面白い話はできないと思ったので、みんなの役に立つ話をすることにしたんです。トランポリンにハマっていること、ちょっと気分が晴れない時や、イラッとした時にトランポリンで5回跳ぶだけでスッキリすることを伝えました」

会社員時代の立石さん(立石さん提供)

何気なく話したトランポリンの効果。しかし、「面白かった」、「トランポリン買おうかな」などの声が多く、思いのほか反響があったそう。立石さんが、こんなにも人の心を掴んだのは、初めての経験だったと言います。

一方で、「音は大丈夫なの?」、「家がすごく広いんだね」という声もあったのだとか。

「ハードルになっているポイントがわかったので、みんなの不安を解消できるトランポリンを作りたいと思いました。私の家も広くなく、ワンルームにベッドと机とトランポリンが並んでいる状態でした(笑)。コロナ禍で運動不足に困っている人はたくさんいるだろうし、トランポリンの需要があると考えて、やるしかないと決心しました」

色々なトランポリンを購入(立石さん提供)

最初は会社員を続けながら始めた、トランポリンづくり。しかし、商品づくりや企画、打ち合わせなどに追われる日々が続き、次第に両立が難しくなっていきました。

「今の私は、28歳で独身で、幸いなことに両親も元気。自分の面倒だけを見ていれば良い身軽な状態なんです。だけど、今後は結婚や出産をするかもしれないし、ライフスタイルに大きな変化が出るかもしれない。今、やらなかったらこれからも何かしら言い訳をして、絶対に行動しないだろうなと思いました。本当は怖がりな性格なんですけど、一度きりの人生、自分で考えたものを全力で売ってみたいと思い、会社を辞める決意をしました」

貯金で1,500個のトランポリンを発注

“ゆかぴょん”のこだわりはなんと言っても「跳び心地」。楽しいから続けられた自身の経験と、幼い頃にベッドで跳ねた楽しい記憶をヒントに、まずは自分が「楽しい!」と思うトランポリンを目指しました。

内部にはコイルスプリングが入っている

自宅が商品で埋め尽くされたことも(立石さん提供)

しかし、トランポリンを作るのは簡単ではありません。立石さんの理想とするトランポリンを製造してくれる工場を探し、ホームページの問い合わせフォームなどから打診をしますが、相手にされないことがほとんど。運よく話が進んでも、見積もりが合わず、振り出しに戻ることもしばしば。

しかし、「もう無理かもしれない」と諦めかけていた時に、やっと製造をしてくれる工場に出会うことができました。

「本当に嬉しかったですね。ただ、発注ロットは1500個からだったんです。でも、当時は断られ続けて感覚が麻痺していたのか、1,500個からでも、自分の求めるトランポリンを作ってくれるならお願いしよう!と思いましたね(笑)」

1500個のトランポリンは倉庫に保管している(立石さん提供)

こうして、2022年7月1日、販売を開始した立石さん。「実際に1,500個のトランポリンを目の前にした時は、やばいと思った」と言いますが、SNS発信などにも力を入れて、新たな出会いを作り、多く人に商品を届けていきました。

トランポリンを通じて“ポジティブの輪”を広げたい

こうして最初に発注した1,500個を、5か月で完売させた立石さん。最近、1,500個の追加発注を決意しました。

「まだまだ、“ゆかぴょん”を待ってくれているお客さんがいるので、追加発注を決意しました。“ゆかぴょん第二章”の始まりです。そして、ここまできたら1万個売りたいですね。日本一のトランポリンを目指そうと思います」

様々な場所で体験会を実施(立石さん提供)

また、“ポジティブの輪”を広げていきたいと意気込みます。

「トランポリンが運動不足解消に活用できることはもちろんですが、人ってジャンプをすると笑顔になるんですよね。怖い顔をしながら跳ぶ人はいない。“ゆかぴょん”の販売や、私のInstagramを通して、笑顔になる人を増やしていきたいです」

お手製の「ゆかぴょんTシャツ」(立石さん提供)

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