バームクーヘンが虹になってその上を動物が歩いている…? そんなくすっと笑える遊び心満載の作品を生み出しているのが、ミニチュア写真家・見立て作家の田中達也さんです。Instagramのフォロワー数は360万人超でその7割は海外。ユニークな作品の数々が世界から注目されています。
今回は岡山シティミュージアム(岡山市)で8月31日まで開催中の特別展「MINIATURE LIFE展2 田中達也 見立ての世界」会場にて田中さんにインタビュー。アイデアの原点や、作品の楽しみ方について聞いてきました。

ミニチュア写真家・見立て作家の田中達也さん

日常を見立てる

会場には、写真作品やミニチュア立体作品など、新作を含めて約170点が展示されています。

『いつまでも新鮮な気持ちを忘れずに』(C)Tatsuya Tanaka (MINIATURE LIFE提供)

気球になって空を飛ぶレタス、海水浴場になったスポンジなど、日用品とジオラマ人形を使って、ミニチュア視点で日常のものが別のものに見立てられています。これが、田中さんの作品の特徴です。

「その日の気分で、例えば食事で何を食べたいか、くらいの感覚で作っています」

『疲れを洗い流しにきました』(C)Tatsuya Tanaka (MINIATURE LIFE提供)

今回は岡山での開催ということで、岡山特産のマスカットと白桃をトランプに見立てた作品も登場しています。

「最初は、トランプの数字もマスカットと同じ緑にしていたんです。でもそれではトランプに見えなかった。そうなると『見立て』の意味がなくなるんですよね。だからトランプの数字は元の色のままなんです」

『岡山県の切り札』(C)Tatsuya Tanaka (MINIATURE LIFE提供)

毎日の作品発表でアイデアに深み

田中さんは、2011年から日用品とジオラマ人形をモチーフにして、日常にある物を別の物に見立てたアート「MINIATURE CALENDAR」をインターネット上で発表し、雑誌やテレビなどのメディアで話題となりました。

『“パン”ラシュート』(C)Tatsuya Tanaka (MINIATURE LIFE提供)

以来、インターネットで作品を毎日かかさず発表しています。毎日発表することに苦労はないのでしょうか。

「よくアイデアが出てこなくて困ることはないかと聞かれますが、1000以上のストックがあります」

『しばらくここで待ってクリップ』(C)Tatsuya Tanaka (MINIATURE LIFE提供)

例えば、日用品がたくさんあるコンビニやスーパー、100円均一の店などはたくさんの物が陳列され、刺激がたくさんあると話します。何かを見て刺激をうけることで、アイデアが出てくることが多いそうです。

「日常生活で浮かんだアイデアはスマホにメモするようにしています。アイデアを毎日考えるということは筋トレに近い感覚ですね」

『オツカレーター』(C)Tatsuya Tanaka (MINIATURE LIFE提供)

同じホチキスの針がモチーフでも、ものすごく小さい人のスケールから見ると、ホチキスの針はビルに見えたり、ちょっと人を大きくしていくと本棚に見えたり、ホチキスの針を横にするとエスカレーターのステップに見えたりする。

作品を毎日作って発表することは、アイデアに深みを与えたり、驚きのあるアイデアをより探すために、必要なことだと思っているそうです。

田中達也ワールドが広がる日も!?

これまではミニチュア作品を多く作り続けてきた田中さんですが、今後は大きな作品にも挑戦していくそうです。今回の展覧会でも、ピンクのボタンを花びらに見立てた木など、大きな作品がいくつかお目見えしています。

会場に入るとピンクのボタンの木があります(ほ・とせなNEWS編集部撮影)

「例えば野菜の森みたいな…普通の森だと思って入ったら、上空から見たらまな板の上だったとか。大きいもので街中のものを見立てていくのも面白いなと思います。寿司みたいな車が走っているとか、パンみたいな電車が走っているとかも楽しいですよね」

『おスシティー』(C)Tatsuya Tanaka (MINIATURE LIFE提供)

2022年秋には神戸空港に常設ミュージアムがオープンし、デッキの芝生エリアには、ブロッコリーを大型オブジェにして展示する予定です。皆さんも一度、田中さんワールドに入り込んで、日常をいつもとちょっと違った視点で見立ててみてはいかがでしょうか。

会場にある田中さんのアトリエの再現ブース(ほ・とせなNEWS編集部撮影)

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