旅行者を始め、多くの人たちが行き来する空港ですが、一般の人が立ち入れないエリアがあります。滑走路敷地内や着陸エリア、駐機スポット、貨物ターミナルなどです。しかしそこには、飛行機の安全・定時運航のため、使命感に溢れる多くの人たちが働いています。高松空港で働く小比賀亮さんも、その1人です。

小比賀亮さん。

今回は小比賀さんを取材し、一般の人が普段見ることがない空港の裏側と、空の旅の安全を守る仕事のやりがいをお伝えします。

【写真】一般の人は入れないエリアでの空港の仕事(全19枚)

乗客と飛行機の重みをペダルで感じる

小比賀さんは、高松商運の航空部に所属し、多岐に渡る業務に携わっています。

「大きく分けると、建物の外と中の業務があります。外で行うのが、グランドハンドリング業務や整備補助業務です」

左から、航空機、トーバー、トーイングトラクター。このトーイングトラクターが航空機を移動させます。

グランドハンドリングとは、航空機を所定の時間に離着陸させるために駐機スポットで行われる、様々なサポート業務の総称です。到着した航空機の誘導、貨物コンテナを搭降載し責任を負うロードマスター、さらに出発時に航空機を所定の位置まで車で移動させるプッシュバックなどが該当します。

トーバーという牽引棒と、航空機を繋ぎ、確認を行います。

「プッシュバックは、ぐねぐねと動くので、熟練した技が必要です。乗客の多さと飛行機の重みをペダルで直に感じます。乗客が多いと、ベタ踏みしても全然進まないんですよ」

トーイングトラクターと航空機を連結するトーバーは「ぐねぐね」と動くので、運転には高度な技と経験が必要だそう。

小比賀さんの携わる業務のほとんどに、社内で定められた作業資格が必要です。例えば、プッシュバックに使う車(トーイングトラクター)の運転1つにも資格が必要で、取得できるまでに3年はかかるそう。資格の種類も、業務内容だけでなく、飛行機の機種ごとにあるというから驚きです。

トーイングトラクターから見る機体。

グランドハンドリング業務に就いていると、高松空港に訪れる政府専用機や自衛隊機、世界中のセレブが所有するプライベートジェットなど、様々な航空機に触れ合るチャンスもあるそう。

「前回の瀬戸内国際芸術祭に世界のセレブがやってきて、僕も豪華な機内やコックピットに入らせてもらうことができました。すごかったです」

グランドハンドリング業務以外にも、整備補助業務として整備士のアシストを行ったり、航空機の防除雪氷などにも携わっています。到着貨物の計量・引き渡しを行う貨物郵便も行います。

パイロットとの着陸やりとりも

一方、小比賀さんが建物の中で行うのが、「ステーションコントロール業務」です。ステーション内で、フライトプランや気象状況などの膨大な情報を正確に処理・判断し、高松空港へ降り立つ航空機のパイロットへ、運行に必要な情報を提供します。もちろんこちらの業務にも、数多くの社内資格が必要です。

ステーションコントロール業務にも携わる小比賀さん。

「たとえどんな天候でも、飛行機が降りてきたら、仕事が発生します」

高松空港は標高185mの高台にあるため、霧が発生しやすいエリア。悪天候時には、航空機の残りの燃料も考えながら、アドバイスを行います。無事に運航できた時は、大きなやりがいを感じるそう。

「学生時代から英語の勉強をしていたので、今は空港の英語担当として、国際線のパイロットともやりとりをしています」

無線を使って、パイロットに情報を提供します。

幼い頃から飛行機や海外が大好きだった小比賀さん。学生時にホームステイを経験し、交換留学生として学んだ経験を、この仕事にも繋げています。

夢は、空港業務のオールラウンダー

小比賀さんは入社7年目を迎えます。「チャレンジは自信に繋がるんです」と何事にも積極的。グランドハンドリング業務やステーションコントロール業務に加え、今後は旅客業務の資格も取得し「空港の全業務をこなせるオールラウンダー」を目指しています。「可能なら、上位資格である運行管理者の資格にも挑戦したいんです」とも熱く語ります。

「1つ1つの業務に、きちんと意味があるんです」

チーム全体のレベルアップのため、自分に何ができるのかを考えながら「どんなことでも吸収してやろう」と熱い気持ちを持ち、小比賀さんは日々の業務に向き合っています。

「飛行機を送り出すときは、ほっとしています」

「1つ1つの仕事に、意味があるんです。関わる全員が怪我なく、無事に運航できるように日々の業務に向きあい、考えています」

しっかりと自信に満ちた口調で答える小比賀さん。安全な空の旅は小比賀さんのような、プロフェッショナルの仕事の上に成り立っているのだと、改めて感じる取材となりました。

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