娘が睡眠障害のため一晩に何度も目を覚まし、そのたびに起きて寝かしつけをしていたという秋山信子さん。一時は娘も自身も心身ともにボロボロになりましたが、アロマを取り入れたり食事の内容を見直したりすることで約2年かけて睡眠障害を改善・克服しました。その方法とはいったいどんなものだったのでしょうか。

秋山さんはこども睡眠カウンセラー協会の代表を務めています(写真提供:秋山信子さん)

一晩に何度も目覚め、親子ともに睡眠不足

秋山さんの三女は脳性麻痺。睡眠障害は生後間もなく始まったといいます。
「一晩にだいたい5~6回、多い時は10回も起きていました。当時は抱っこしないと寝てくれなかったので、娘が目を覚ますたびに私も起きて抱っこして寝かしつけ、また1時間もしないうちに目を覚まし…といった具合でした。そんな生活が2年半以上続き、娘も私も心身ともにボロボロになっていました」

生後7か月頃。睡眠障害が続き、表情も乏しかった(写真提供:秋山信子さん)

医師に相談して睡眠導入剤を処方してもらったのが2歳半の頃。それで一時期は少し落ち着いたものの、それも長くは続かなかったそうです。娘さんの睡眠障害には、寝つきが悪い“入眠困難”と途中で何度も目を覚ます“中途覚醒”の症状があり、睡眠導入剤で寝つきは改善されたものの中途覚醒は続いていたといいます。

「それをお医者さんに相談したら、もっと強い薬にしようかという話になって。強い薬に頼るのではなく、何かほかの方法で睡眠を改善できないかと考えるようになったんです」

睡眠に効果があるとされる3種類のアロマをブレンド(写真提供:秋山信子さん)

薬に頼らずに睡眠を改善したい

そこで目を付けたのがアロマの効果。じつは秋山さん、アロマ関連の事業を手掛けており、アロマに関する知識を持っていました。そこで睡眠に効果があるとされるアロマを使い、香りをかぐ“芳香浴”をしたりアロマトリートメントをしたりするうちに中途覚醒が少し落ち着いてきたといいます。

アロマトリートメントの様子(写真提供:秋山信子さん)

「中途覚醒がまったくなくなったわけではありませんが、それでも回数が少なくなったことで私もだいぶラクになりました。それで、もっといい方法はないかと思い、睡眠について本格的に学び始めました」

秋山さんが睡眠に関する資格講座で学んだのが、栄養の重要性でした。
「娘の睡眠障害に関しては、結局のところ栄養不足が原因だったと気づくことができました。そこで、必要な栄養をきちんと食事で補うようにしたところ、驚くほど中途覚醒の回数が減り、1回に眠る時間が長くなっていったんです」

秋山さんが実際に作っている食事。必要な栄養を食事でとること、朝食をきちんと食べることが大切だといいます(写真提供:秋山信子さん)

「睡眠が改善されると、日中の活動も変わりました。脳性麻痺特有の症状の現れ方も穏やかになって、言葉を理解する力も上がりました。眠れていなかった頃は表情が乏しくて全然笑わなかったのが、眠れるようになると笑顔が出るようになって。5歳の頃には睡眠導入剤もやめることができました」

写真は5歳頃。この頃にはアロマも必要なくなり、コロンと横に寝かせればすぐ寝付くようになりました(写真提供:秋山信子さん)

日本の子どもは睡眠不足

自分自身の経験を通して睡眠の重要性について実感した秋山さん。2020年、こども睡眠カウンセラー協会を立ち上げました。
「OECD(経済協力開発機構)の調査で、日本の子どもの睡眠時間は加盟30か国中最下位。日本の子どもは睡眠不足なんです。これは障害の有無に関係なく、生活リズムが乱れて睡眠が乱れ、認知機能やメンタル面の不調を起こしている子どもがたくさんいます。そんな子どもたちの睡眠を改善しようと、協会では睡眠の専門家を育成。睡眠教育やメソッドの提供を通して啓蒙活動を行っています」

さらに2023年4月からスタートさせるのが「アロマ療育アカデミー」。秋山さんと同じように障がいのある子どもの睡眠障害に悩んでいる人に向けて、アロマと栄養と睡眠とマインドという4つの軸から、家庭で保護者ができる療育として秋山さんのメソッドを提供していきます。

「自宅でできる、健康に生きるための土台作りとして、私自身の知識と経験を共有したい」と秋山さん(写真提供:秋山信子さん)

子どもだけでなく大人の睡眠にも注目が集まっている現代。睡眠について考えることが、暮らしのリズムやライフスタイルを見直すきっかけになるかもしれません。

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