過疎化が進んで若者がいなくなり、空き家が増えて住人同士のつながりが希薄になっていく地域。日本中で問題になっている限界集落が、岡山市にもあります。そんな地域に再び活気が戻るきっかけとなったのが、「ヤングカープ岡山」という少年野球チーム。彼らは野球だけでなく地域の活動にも積極的に参加し、住民との交流を深めていきました。

地域の防災訓練に参加するヤングカープ岡山の選手たち

その地域とは、岡山市南区にある小串学区。約30年前までは小学校でも1学年に30人ほどいたのが、今では全校生徒合わせても十数人。かつて地区の子どもたちで結成していたソフトボールチームも今はありません。そんな小串学区にあるのが、小串スポーツ広場の多目的グラウンド。2021年11月から、ヤングカープ岡山はこの小串グラウンドを練習場として利用しています。

ユニフォームは赤いシャツと白いシャツがあり、チームジャンパーは赤色。同行する保護者の多くも同じジャンパーを着ています

選手たちの明るくはつらつとした声。ユニフォームの鮮烈な赤色。ヤングカープ岡山により、まるで時が止まったように静かだったこの地域に新たな風が吹き込まれました。

そもそもヤングカープ岡山がメインの練習場としているのは、小串から車で約30分離れた場所。それがなぜ小串グラウンドで練習するようになったのでしょうか。ヤングカープ岡山の黒瀬雅洋代表に話を聞きました。

約20年、ヤングカープ岡山に関わり続けている黒瀬代表

「ヤングカープ岡山が発足したのは30年以上前。中学1年生から3年生まで、約50人ほどが所属しています。小串グラウンドで練習するようになったきっかけは、私の高校時代の同級生が小串に住んでいて、彼から『小串グラウンドを使ってほしい』という話があったから。現在は月に2回、小串グラウンドで練習しています」

「当初はグラウンドも荒れていてね。手入れがされていないグラウンドは、使う方も雑な気持ちになるから使ったあともきれいにしていかないんですよ。ヤングカープ岡山が使うようになってからは、選手と一緒に保護者も来ますから、練習中に保護者の方が草抜きをしてくれたりして。もちろん使ったあとはきちんと整備して帰る。そうして少しずつきれいなグラウンドになっていきました」

小串グラウンドはヤングカープ岡山がいつも練習している場所より広く、トイレも近くにあって使いやすいそうです

練習がある日は朝から晩まで小串にいる選手たち。やがて地域の人たちにとってもヤングカープ岡山の存在は身近なものになり、選手たちは地元で開催される朝市や防災訓練にも参加するようになりました。

朝市の様子。赤いジャンパーの集団は存在感があります

「地域の方はヤングカープ岡山を『この地域になくてはならない存在』と言ってくれます。地域ににぎわいを取り戻す起爆剤になってくれた、と。また私たちも、選手たちにのびのびと野球ができる環境だけでなく地域貢献の機会も与えてくれた小串のみなさんにとても感謝しています」

さらに今後も小串での活動を広げていきたいと黒瀬代表は言います。
「今はグラウンドの利用は月に2回だけで、もちろん野球の練習を優先しているんですが、今後もっと小串に来る頻度が増えれば地域のみなさんとともにさまざまな活動をしていきたいと思っています。また、小串の子どものなかに野球がしたいという子がいたら、ヤングカープに入ってもらったり。もっともっと地域との関わりを深めていきたいです」

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