かつて高松一の繁華街といわれた商店街に、アートで再びにぎわいを取り戻したい。県外に住む高松出身者が、高松にUターンしたくなるようなワクワクを仕掛けたい。そんな思いでスタートしたイベント「Setouchi Art Jack」が、現在香川県高松市の商店街で開催されています。

商店街に掲示された300以上のフラッグアイコンに、専用のアプリを入れたスマホをかざすと、何もない空間にアートが出現

商店街に人の心を動かす仕掛けを

自らも写真家としてアートに携わる香川智彦さん。高松市出身で、現在は東京を拠点にさまざまな活動をしています。
「このイベントの構想を思い付いたのは約1年前。それから商店街のみなさんと一緒にアイデアを練り上げながら準備を進めてきました。私自身、高校時代の思い出が詰まっているこの商店街に、みんなが元気になるような、ワクワクする仕掛けを作りたいと準備を進めてきました」

10月9日のオープニングセレモニーでお披露目された作品、「香川の電車はうどんで出来ています」(窪田望)。AIを使って制作された縦3m×横15mのアート上に、夜はプロジェクションマッピングで映像が投影される

そのために用意したのが、最大300点にものぼるデジタルアート。商店街のいたる場所にイベントポスターとフラッグアイコンが貼り出されており、ポスター上のQRコードを読み取って専用アプリを表示。そのアプリを通してフラッグアイコンをスキャンすると、スマホ上にアートが出現するという仕掛けです。しかもこのデジタルアートは、NFT(非代替性トークン)として購入することもできるのです。

商店街じゅうがアートミュージアム化するこのイベントのコンセプトは、「高松を遊びつくすオトナの文化祭」。デジタルアートだけでなく絵画や写真といったリアルアートも展示されているほか、イベント期間中はライブペインティングも実施。また、指定の場所で1,000円のイベント特別チケットを購入すると、商店街内の40店舗以上の協力店でお得なクーポンが利用可能。アートを楽しみながら街を歩き、その途中で立ち寄った店でお得なサービスが受けられるという、まさに街を遊び尽くせるイベントです。

「遊」という字を組み込んだドローイングがこのイベントのメインイメージ

商店街の空きビルなどを使ってリアルアートも展示・販売

アートは高尚なものじゃない

「アートって高尚なものじゃなく、もっと日常に馴染むものであっていいと思うんです。今、瀬戸内国際芸術祭の会期中ですが、島という非日常空間で楽しむアートとは対照的に、商店街というゴチャゴチャした生活に近い場所で手軽に親しむアートというものがあってもいいと思う。単純にこのアート好きだな、これはちょっと好きじゃないな、そういう感じ方でいいので、たくさん作品を見て、そして商店街の隅々まで歩いていろんなお店にも足を運んでほしいです」

蛍光塗料を使用しブラックライトで浮かび上がる絵画作品

ローカルネットワークの強さを再認識

東京在住で、Setouchi Art Jackの開催直前まで神戸でイベントを開催していた香川さん。準備のために高松に来たのはイベント3日前でした。
「自分は全然高松に来られなかったんですが、イベントの実行委員会をはじめ地元の協力者の方やその関係者の方たちが地道に準備をしてくれていました。ポスターを作ったりお店に協力を依頼したりしたのもすべて彼らの努力。地元でしっかりつながりを持っている人たちが協力してくれたからこそ、今回のイベントが実現できたんです」

「アートとデジタル技術を盛り込んだお祭りで“ジモト”を面白くしたい」と香川さん

Setouchi Art Jackは10月9日~10月23日までの15日間開催。今後は年に1度の開催を目指しているほか、他エリアでの展開も検討中。アートで人を動かし、社会を動かす仕掛けがさらなる広がりを見せていくのが楽しみです。

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