地元産の食材を積極的に使用した会席料理が人気の、広島県三次市の「美味彩々らんや」。酒が楽しめる和食店の多くがそうであるように、2020年以降、コロナ禍の影響で利用客が減りました。ランチ営業に力を入れるほか、新たな事業の柱として「プリン工房 吉宝堂」に挑戦中です。WEBショップでの販売や、東京・地元広島などで販路を開拓しています。

提供:美味彩々らんや

和食店なのに、プリン? ちょっと意外な組み合わせですが、和食店ならではのこだわりと思いが詰まっていました。

和食店のデザート 人気ナンバー1はプリン

美味彩々らんやを営む、バルールコーポレーションの社長であり、料理人でもある国広直之さん。調理の専門学校を卒業後、ホテルや飲食店での仕事を経験したのち、実家で母親が営む店を継いだという経歴の持ち主です。

左が国広直之さん 提供:美味彩々らんや

ホテルで働いてるときにスイーツを担当し勉強していたことから、美味彩々らんやでもプリンをデザートメニューのひとつとして提供してきました。黄身とたっぷりの生クリームを使用して低温調理で仕上げるまろやかなプリンは、もともと店のデザートメニューの人気ナンバー1。完売続出のため、お店に着くやいなや「デザートのプリン、とっておいて」と先にオーダーする人もいるほどなのだとか。

約1年前、コロナ禍を機に菓子製造業許可を取得し、「とろうまっプリン」として販売をスタートしました。多店舗展開の地元スーパーに卸したところ、月間で1,000個以上購入されました。

「とても驚きました。こんなふうに認知していただけるなら、販路を広げていくと可能性があるかもしれない」と、2021年11月、装い新たに誕生したのが、スイーツブランド「プリン工房 吉宝堂」です。

和食店が作るプリンということで、和柄をモチーフにしたパッケージに変わったほか、味のバリエーションが増えました。中には三次市内の酒蔵・美和桜や三次ワイナリーとのコラボレーションプリンもあります。

和食店ならではのこだわりと地元への愛情が詰まったプリン

定番メニューはもともと展開していた「とろうまっプリン(プレーン)」のほか、抹茶プリン、ほうじ茶プリン、ショコラプリン、マンゴープリン、メープルプリンの6種類。

提供:美味彩々らんや

和食店らしく、素材にこだわっています。抹茶は厳選した結果、色と風味の良さから宇治抹茶を使用。ほうじ茶はもともと店で提供しているお茶でもある滋賀県産の無農薬茶葉。ショコラは国際規格を満たした製菓用のチョコレート・クーベルチュールを使い、味わい深く仕上げました。マンゴーとメープルは、下半分がプリンで、上半分はシロップをジュレ状にしたもの。ジュレだけ食べても美味しく、プリンとまぜることで味の変化を楽しむこともできます。

提供:美味彩々らんや

「三次市は2世帯・3世帯で暮らす方が多いことから、ご年配にもちびっこたちにも好まれるような味展開にしました」と国広さん。家庭でのあたたかな語らいを思い描いてのラインナップです。

東京での展示会で「意外な組み合わせだけど美味しいですね!」と嬉しい反応があったのが、霧里ワインぷりん(赤)・霧里ワインぷりん(白)・純米吟醸酒ぷりんの3種類です。

提供:美味彩々らんや

広島県三次市の三次ワイナリーと美和桜酒造とのコラボレーションで実現しました。上半分がお酒を使ったジュレで、下半分がとろりとしたプリンになっています。

提供:美味彩々らんや

使うお酒はどれも美味彩々らんやで提供してきたもの。お酒とプリン、これまた意外な組み合わせですが、国広さんはもちろん、ワイナリーと酒蔵も「美味しい!」と納得の味。特に純米吟醸酒ぷりんは、日本酒本来のフルーティーな香りを飛ばさないようにするのが難しく、何回も試作を重ねたのだとか。「コロナ禍で大変な思いをしているのは和食店だけではありません。商品化を喜んでくださいました」と話します。

提供:美味彩々らんや

急速冷凍機を導入し、ジュレは冷凍保管が可能です。コラボレーションプリンの販売を知った農家や醤油屋などから「うちの商品でプリン、作れませんか?」という問い合わせが入っており、現在、はちみつや醤油をつかった新たなコラボレーションプリンに挑戦中なのだとか。和食店が作るため、数千個単位ではなく少量での生産が可能である点も、作り手にとっては魅力のひとつ。

味にこだわる和食店が手掛ける、色とりどりのプリン。今後のバリエーションにも期待が膨らみます。

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