種をまくのが役割

幼稚園をはじめる前の1年は、小学校の講師を辞めて、準備に専念。森の幼稚園をいくつか見学して、自然以上の先生はいないという思いが強くなった。

みんなで協力!のこぎりをエッホッエッホッ!

「教室の中だと、先生が季節毎に掲示物を変えていくだけなので限界があるが、自然の中だと、1週間前になかったつぼみが咲いていたり虫がいたりと、日々移り行く自然が子どもたちに教えてくれる。そして、そこには学びがいっぱいある。今の教育現場はすぐに成果を求めようとする。でも『心、生きる力はそんなものじゃない。長い目でみないといけない』」

自然の中で雪すべりを楽しむこどもたち

山下さんは、みそ汁の具を例に、教育のあるべき姿を語る。みそ汁の具を切る時、大人は等間隔に切るが子どもはバラバラに切る。でも火の通り具合が違ったりする中で、「等間隔に切れば火の通り具合が揃っておいしい味噌汁が作れるのだ」と気づく。これが学ぶということだと。

「今の教育は安全、キレイ、スピード(効率)が求められることが多いが、それはサービス業。教育は本来はこの逆であるべき。危ないこと、汚いこと、ゆっくりやることを通して、安全、キレイ、スピードを逆に自然に学んでいくのが教育」

包丁だって使えるよ

最後に、「森のようちえんに来て、子どもたちが変わったことはありますか?」と聞くと、山下さんは、「すぐに結果を求めるのはサービス業でしょ」とした上でこう返事をした。

「成果を短期的にみるよりも、“たねまき”という名前にこめているように『どれだけ良い種をまけるか』に思いを込めている。目に見える種だけじゃなくて、目に見えない、例えば自信や協力・調理ができるようになるといった種もまいていけていたらと思う」

心・技・体、様々な種をまくため、森のようちえんをしながら、得意を活かして空手教室と塾もしている山下さん。「幼稚園をやるのは夢だったけど、使命でもある。はじまって、まだ3年生。夢をかなえたのではなく、まだスタート。それを積み上げていきたい」と最後まで、まっすぐな笑顔が印象的だった。

「子どもたちはまだまだ成長途中で、これから芽が出てくるのを楽しみにしている。種がまかれていなかったら、生えてこない。良い種をまいておけば、それぞれのタイミングで芽が出てくる」

山下真矢さん一家

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