大小の点が織りなす無限大の表現 作家が語るドットアートの魅力
素材は自然の石。ベースを黒や紺で色付けしています
素材は自然の石。ベースを黒や紺で色付けしています
ドットアートという表現を知っていますか。大小の点だけで幾何学的な模様や絵柄を作り出す表現方法です。美術やデザインの専門知識や技術がなくても、誰でも気軽に始められるというドットアート。2021年秋、香川県を代表する観光施設、栗林公園でも作品が展示されました。
今回は、香川県小豆島に住むドットアート作家のなかがわゆきこさんを取材しました。
なかがわさんがドットアートを始めたのは2018年。
「実はその頃、ちょっと心の調子を崩してしまった時期があったんです。それが少し回復してきた頃に、何か新しいことを始めたいと思って調べるうちに出会ったのがドットアートでした」
「やってみると、少しずつ作り上げていく楽しさや達成感はもちろんあるんですが、細かい作業が多いのですごく没頭するんですよね。制作中は悩みとか心のモヤモヤをいっさい忘れて描くことだけに集中できる。それが、精神面でもよかったように思います」
それから少しずつ作った作品をSNSにあげるようになったそうですが、その際、自分のオリジナリティとして廃材や端材に描くというスタイルをとっていきます。
「主には川原で拾った石や砂浜で見つけた空きビン、シーグラス。古いレコードやアクリル板の端材なども使っています」
SNSに投稿された作品を見てオファーがあり、2019年に高松市の美術館で初の個展を開催。
当時は、実家の仕事を手伝いながら趣味での制作だったといいます。
「展示の話をいただいてちょっと自信がつきました。でもその時点では、誰かに見てもらうのはこれで終わりで、また趣味として自分のペースでゆっくり作っていくつもりでした」
ところがそれから縁がつながって、小豆島の二十四の瞳映画村での長期間の展示が決まり、栗林公園でも展示をすることに。自分でもこんなことになるとは想像していなかったといいます。
こうして少しずつ活動の場を広げると同時に、島内ではワークショップも開催。多くの人にドットアートに親しんでもらう機会を提供しています。
「特別な知識も技術も必要なく、道具もそんなに特殊なものではないので誰でも簡単に始められるのがドットアートの魅力の一つですね。お友だち同士で参加した方は、多少失敗してもお互い笑い合いながら楽しく作業したり、かと思えばおしゃべりを忘れて集中したり。小学生に教えたときは、思い切りのよさと自由な発想に、逆にこちらが勉強になるくらいでした」
「ただただ無心になれるのがドットアートの魅力。それと個人的には、描いている途中や出来上がったものを見ているとき吸い込まれそうな感覚になるんですが、その感じも好きです」
今後はもっと大きい作品にもチャレンジしてみたいというなかがわさん。心の回復の一助となったドットアートが、今では生活の中心になっているようです。