デンマークの学校が手本 「誰もが互いに教え合い学び合う場」を作った夫婦
ふぉる家を営む筒井夫妻
ふぉる家を営む筒井夫妻
「何となく就職したけれど、これが本当に自分の適職なんだろうか」。「転職したいけれど、自分に何が向いているのかわからない」。そんな悩みを抱えている人も多いと思います。そういう人に気軽に使ってほしいと、2021年12月1日にオープンしたのが「ふぉる家(ふぉるけ)」です。
今回は、ふぉる家を立ち上げた夫婦、匠さんと沙耶さんに、オープンの経緯や今後の活動について聞きました。
沙耶さんは29歳のとき会社を辞め、デンマークの国民学校「フォルケホイスコーレ」に通いました。そこは、広大な敷地のなかで先生と生徒が寝食をともにし、さまざまな活動を通して自分を再発見する場。沙耶さんの価値観はその経験を通して大きく変化しました。
帰国後、ふるさとの香川県へ戻ってきた沙耶さんは自給自足体験イベントで匠さんと出会って結婚。フォルケホイスコーレのような場所をここ高松で作りたいと、ふたりでコツコツDIYをしながら、ビルの一室にふぉる家をオープンしました。
新卒採用に関する仕事の経験もある妻の沙耶さんは話します。
「日本では、やりたいことがわからないまま大学に進学し、就職活動ではじめて自分の適性を考える学生は多いと思います。あるいは、一度就職したけれど本当に自分に向いているものを見つけたいと思っている人も。自分には何ができるんだろう、どんな働き方や生き方があるんだろう。そういうことをいろんな人との関わりのなかから学ぶ場として、ふぉる家を使ってほしいと思っています。就職のことを現実的に考え始める前の中学生や高校生も大歓迎です」
デンマークのフォルケホイスコーレのように、自分の適性を見つけたいと思っている大人たちはもちろんですが、それ以外にも沙耶さんが「ぜひふぉる家に来てほしい」と思っているのが、学校での学びが合わないと感じている小中学生。「学校の勉強のペースが速いとか遅いとか、あるいはもっと自分の興味のあることをとことん勉強したいとか。自分のペースで自分の興味に合わせて学べる場を提供したい」と話します。
「たとえば学校の授業が合わないと感じている子も、ここに来ていろんな経験を積んだ大人と話すことでちょっと悩みが軽くなったり視野が広がったりすると思うんです。逆に大人のほうも、そういった子どもたちの悩みを聞くことで気づきがあるかもしれない。普段の生活では関わることのない年齢や職業の人と話をすることで、お互いに刺激となって、いい影響を与え合えればと思います」
室内には、DIYの道具や自給自足に関する本、工作グッズや絵本、ボードゲームなどさまざまなものが用意されていて、誰でも自由に使うことができます。ふぉる家では、誰かが一方的に教える授業や講義というものはありません。さまざまな年代の利用者がそれぞれの時間を過ごしたり関わりあったりすることで、自然発生的に起こる興味やひらめきによって何をするかが決まっていく場所です。
「学校の学びのペースが合わない小中学生とか、将来の進路を考えている高校生、大学生。一度就職したけれど転職を考えている人や、さらにはリタイア後の人も。どんな人でも使ってもらえる場所にしたいと思っています。10時~20時は私たち夫婦がいます。自分の勉強をしてもいいし、ここにあるものでDIYをしたり工作したりしてもいい。ただ私たちとおしゃべりするだけでもいいですよ」
「ほかにも、小さい子ども連れのお父さんやお母さんの利用も歓迎。ちょっとの間集中して仕事がしたい、ということなら、私たちがお子さんの相手をします。私自身、子どもが生まれたらここに連れて来ようと思っていますし、小さい頃からいろんな大人と関わらせたいなと思っています。いろんな世代のいろんな立場の人が交流してここから何が生まれていくのか、とても楽しみですね」