2021年12月14日・15日の2日間、香川県高松市の宿泊施設「WeBase 高松」にて、あるファッションブランドの試着会が行われました。2020年9月に誕生したそのブランドの名は、SOLIT(ソリット)。体型や障がいの有無に関わらず、誰もが着られる服を開発しています。四国では今回が初の試着会開催となりました。

誰もが好きな服を着られる社会に向けて

ホテルのロビーで行われた試着・展示会

SOLITの最大の特徴は、1600通り以上の組み合わせから自分に合ったサイズ・形の服をカスタマイズできること。さらに、「車いすを操作する際に袖や裾が邪魔になる」といった、車いすユーザーから実際に聞き取った細かいニーズも服作りに反映しています。

ジャケットの袖の内側にはリブ袖がついています

例えばジャケット。前開きの部分の留め具は、ボタンではなく磁石でくっつく仕様にすることもできます。また、袖にリブを仕込んで腕まくりがしやすいようにしているのもポイント。「車いすの車輪に当たって袖が汚れる」という車いすユーザーの不満から生まれたアイデアです。

肩の部分の生地の縫い方にもこだわりがあります

また、車いすを動かすには肩を大きく動かす必要がありますが、ジャケットは肩まわりが窮屈になりがち。そんな悩みを解消するため、肩を動かしやすい生地の縫い合わせ方を採用したり、脇の部分にマチを付けたりと、縫製にも細やかな工夫が凝らされています。

シャツの袖にもゴムが仕込んであり、簡単に腕まくりができるようにデザインしています

そんなSOLITの服は、完全受注生産。客自身がオンラインで自分にぴったりの服をカスタマイズし、発注したら、それを受けて製造が開始されます。いろいろアドバイスを聞きながら選びたい、という場合はコミュニケーションアプリでの相談も可能。不定期で開催している試着会なら、リアルでじっくり相談することができます。

自分自身、着たくても着られないという体験をしてきたという田中さん

好きな服を着たい、その思いはみんな一緒

「日本にいると、着たい服を着るには痩せなければいけない、という考え方が一般的ですよね。服を通して痩せなきゃいけない、私はこれじゃダメなんだと思わされる。そんな経験を自分自身も積み重ねてきました。そしてある日、車いすユーザーの同級生と話しているときに、体型だけでなく障がい者やセクシャルマイノリティの人も同じようなストレスや違和感を抱えているということを知ったんです。それが、SOLIT立ち上げの直接のきっかけでした」

SOLITの服にメンズ、レディスという分類はありません。カラーも、「女性っぽい色」「男性っぽい色」というイメージの強い色は使わず、どんな性の人も手にとりやすいようにしています

SOLIT立ち上げの前は、自然災害や気候変動に関する活動をしていた田中さん。温暖化やゴミ問題、大量生産・大量消費の問題にずっと目を向け続けてきました。そんな彼女が考えるのは、「だれも取り残さない、どれも取りこぼさない、人も動物も自然も健全に共存できる社会」。「オール・インクルーシブ経済圏」の実現を目指し、SOLITも「オール・インクルーシブファッションブランド」と位置付けています。

必要な人に、必要な服を、必要な分だけ。それがSOLITの考え方です

サステナブルな服作りを

「環境問題に取り組んできた人間として、『これ以上ゴミを増やしたくない、新しい服なんて必要ない』という思いもありました。ですがいろんな人の話を聞いていると、確かにオーバーサイズの人や障がい者、セクシャルマイノリティの人たちが着られる服は少ないと気付いて。世界中でものすごい量の服が作られ、捨てられているのに、一方で着られる服の選択肢がないという人がいるって、すごく不自然ですよね。だから、まずは目の前の、普段の服選びにストレスを感じている人たちのニーズに応える服を作っています。それもできる限りサステナブルな方法で。本来、楽しい自己表現の一つであるファッションを、すべての人に楽しんでもらいたいと思っています」

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