「趣味は努力です!」
爽やかな笑顔で気持ちよく、そう言い切った。今回話を聞いたのは、スポーツで国際貢献活動を行う岡山の認定NPO法人ハート・オブ・ゴールドに勤務している森洋貴さん。森さんはJICA海外協力隊として、ミクロネシアで陸上を指導していた元中学校教諭。学生時代から体育や陸上が得意だったわけではなく、努力することが好きだったと話をしてくれた。

努力することで、乗り越えていく達成感やできるようになる喜び。森さんは、それを伝えるために教師になったということだ。生徒と向き合い、『夢を持ってがんばれー!』と毎日進路指導するなか、「俺の夢は何だ?」と自分自身の夢とも向き合ったという。

元々国際協力に興味があった森さんは、海外で活躍する日本人選手を見て、自分も何か海外でできることはないかと思い協力隊に応募したのだそう。生き方を示す。そんな森さんの背中を見ていた生徒たちもきっと背中を押されたことだろう。

教師時代の森さん

ミクロネシア・ヤップ島での経験

協力隊として、ミクロネシアのヤップ島に派遣された森さん。ヤップ島のスポーツ協会に所属し、陸上監督として国際大会の準備や小学校の巡回をしていた。

日本の体育では、計画を立てて、目標を設定したり、話し合いをしたり、目標を達成するために練習したりということを通じて、生徒たちが出来るようになったことを認識できるように指導していた。

一方ミクロネシアでは、体育はお楽しみの要素が強く、体育館などの施設もないため天候によって計画が左右される。指導していた陸上チームも最初は嫌々集まっていた。それでも森さんは現地流をしっかりと学び、自然や伝統を大切にする島に自分を受け入れてもらったことに感謝していた。現地の選手たちと徐々に打ち解け、最終的には、選手自ら「まだ続けたい!!」と、陸上を、そして努力することを楽しんでくれた。森さんが努力を惜しまず、海外でできることを実践した結果だろう。

ミクロネシア・ヤップ島での活動の様子

ちなみに森さんの同期隊員によると、森さんはJICA海外協力隊派遣前の訓練所でも、毎日ご飯をモリモリ食べ、メキメキと筋トレに励み、常に努力していたらしい。

体育で国際協力をするパイオニア、ハート・オブ・ゴールドへ

帰国後、異文化で生活する大変さを実感していた森さんはメキシコにわたり、現地の日本語補習授業校に勤務。海外で過ごす日本人の子どもたちに寄り添い、異国の地で前向きに生きるためのサポートをしていた。契約満了にあたり、やはり体育で国際協力をしたいという気持ちで仕事を探していたところ出会ったのが、ハート・オブ・ゴールドだった。

森さんがJICA海外協力隊として派遣されていたころには、すでに体育で国際協力にかかわるボランティアもたくさんいた。しかし、体育科教育を国際協力として根付かせたハート・オブ・ゴールドはまさにパイオニア的存在。体育分野での国際協力の歴史が根付いており、現地の人としっかりとした関係が構築できている。森さんはその一員として、力を発揮したいと強く思ったという。

カンボジア・プレイヴェン州のRoung Domrey小学校にて、バスケットボールの授業の様子

カンボジアでの体育科教育向上に取り組みます!

森さんは実施中のプロジェクトでカンボジアの体育科教育の向上に取り組んでいる。現在はコロナの影響もあり、岡山県にある本部事務局からオンラインで活動を行っている。協力隊関係者もチームの中にいて、専門家の意見を聞きながら活動しているそうだ。

オンライン会議の様子

渡航後は、対象エリアにて小学校から高等学校まで一貫した体育科教育の普及活動に取り組む。ミクロネシアやメキシコでやってきたように、現地流をしっかりと学ぶことが第一歩となるだろう。

場所が変われば大事にしていることも変わる。そこを理解し、自分の思いを伝えたいと語る森さん。一人でも多くの子どもが体育を通して、夢を持てるように、活動していく。そして、努力できる環境を提供するのが森さんのライフワーク。「まずは自分が努力!」そう言って笑う森さん。まさにハート・オブ・ゴールド、心の金メダルだ。

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