1300万年前の火山活動が作った壮大な景観

小豆島を代表する観光地の一つ、寒霞渓(かんかけい)。紅葉スポットとして有名なこの寒霞渓は、1300万年前の火山活動によって隆起した岩肌が木々の間から露出していて、大地のエネルギーを感じられる渓谷です。そんな寒霞渓で今年はじめて行われたイベントが、スピリチュアルナイトツアー。その概要について、寒霞渓ロープウェイの三浦崇寛さんに聞きました。

三浦さんは、今回のイベントのアテンドも務めています。

「これまでも星空ガイドなどのナイトイベントは何度か実施していましたが、スピリチュアルと絡めたイベントは今回がはじめての試みです。ただ星を見るだけなら、もっときれいに見える場所は日本全国にいくらでもある。ここ寒霞渓ならではの体験や企画ができないかと考えたのがきっかけです」

昼間のロープウェイの中から見た景色。火山活動によって作られた大地が長い年月をかけて浸食され、独特の景観を作り出しています。

実は寒霞渓は、『日本書紀』にも記述があるほど歴史ある景勝地。その記述によれば、応神天皇が小豆島を訪れた際、寒霞渓に鉤(かぎ)をかけてのぼったとあり、そのことから古くは鉤掛山(かぎかけやま)、神懸山(かみかけやま)などと呼ばれていた時代もありました。また、寒霞渓のすぐ隣には瀬戸内海でもっとも高い星ヶ城(ほしがじょう)という名の山があり、その名の通り頂上には城跡が残っています。いにしえより聖なる地とされてきた寒霞渓で、今回のスピリチュアルナイトツアーは開催されます。

大きな“ゆりかご”に乗って、母なる大地へ

「イベント当日は、寒霞渓ロープウェイのふもとの『こううん駅』まで運行されるバスに島内の指定の場所から乗っていただきます。真っ暗な中、駅に到着すると、駅舎はブラックライトでライトアップされ、昼間とは違った幻想的な雰囲気になっています」

寒霞渓ロープウェイの「こううん駅」。

ロープウェイの客車にもブラックライトが灯されています。ぼんやりと青白い光が浮かぶほかは夜の闇に包まれ、とても幻想的な雰囲気。大地の生命力あふれる渓谷をゆっくりと上がっていくゴンドラは、まさに大きなゆりかご。日常からどんどん離れて、星と神話の世界へと近づいていきます。

山頂駅の駅舎内。天井には星空を思わせる照明。

瀬戸内海でいちばん星に近い島

「星は古来より、農耕や航海の目印になるなど、人間の暮らしと密接に結びついてきました。頂上に着いたらまず、そういった星と人との関わりや小豆島にまつわる星の話などを、広場に座ったり寝転んだりした状態で聞いていただきます。長い宇宙の歴史、いにしえの人々の暮らしや星の神秘性に思いを馳せ、自分が宇宙の一部であることを実感していただく時間です」

展望台からは島の夜景と星空が同時に見渡せます。

イベントの後半は、「コズミックメディテーション」と呼ばれる瞑想の時間。ゆったりした呼吸、体の筋肉の収縮と弛緩を繰り返し、徐々に体から意識を離して宇宙との一体感を感じる時間です。それはまるで、目の前に広がる星空のなかに吸い込まれていくような体験。日頃の小さな悩みやストレス、困りごとなどから解放され、この大きな自然のなかでただ生かされていると感じられる瞬間です。

三浦さんはこのイベントの開催が決まってから、約半年間、星について勉強したそうです。

「今回のイベントのために星のことや島に残る星の伝説などを調べて、小豆島や寒霞渓にはまだまだ知られざる魅力があったことに気づかされました。イベントは、島民の方はもちろん島外、県外の旅行者の方も参加できます。せっかく小豆島に来られたなら、島でしかできない体験をして思い出を作ってもらいたいですね」

今シーズンのスピリチュアルナイトツアーは、残り6回。10月29日(金)・30日(土)・31日(日)、11月5日(金)、6日(土)、7日(日)に開催予定です。

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