自分のことを分かってくれる人がいる

川口梨央さんは、知的障がいがある陸上競技選手です。中学校の部活動で陸上競技を始めたという川口さんは、高校では、パラ陸上走り幅跳びT20のクラスで日本新記録を更新する選手に成長しました。高校卒業後の2021年4月からは、社会福祉法人慶光会のグループハウスひるぜんで生活を始め、働く場として有限会社ドアーズに就職、そして障がい者の活動を支援するNPO法人かがやきプロジェクトの選手として競技をしています。

一度にいろいろなアドバイスを言われることが苦手だという川口さん。「コーチは自分のことを分かってくれている。私はすぐに忘れちゃうし、応用とか苦手なんだけど、コーチは1つのことを1つずつ教えてくれる」と、話してくれました。

川口さんのコーチを務めるのは浅田陽一さん。「知的障がいのある人に伝えるには、ちょっと工夫が必要です。身振り手振りを使ったり、写真を使ったり。こういったことは日中、福祉の仕事をする中で、先輩から教わってきました」

かがやきプロジェクトのスタッフは、社会福祉法人慶光会の職員として障がいのある人たちの生活を支えていたり、就労支援をしたりしている人たちです。「暮らしを支える慶光会、夢を支えるかがやきプロジェクト。それぞれの役割を持つ組織が連携することで、初めて選手が安心して活動できる場ができます」と、慶光会の理事長を務める柴田智弘さんは話してくれました。

一緒に夢を追う

川口さんに今後の目標を尋ねてみると、「とりあえず日本新記録を出す。それと、やっぱりパラリンピック」と笑顔から一変し、真剣な表情で答えてくれました。「我々は、支援というよりは一緒に夢を追わせてもらっている」と柴田さん。

夕焼けに照らされるトラックには、選手とスタッフが一緒になり、瞳を輝かせながら夢に向かう姿がありました。

川口梨央
鳥取県出身。2019世界パラ陸上競技ジュニア選手権大会走り幅跳びT20/U20クラスで5m05の記録で優勝し、日本新記録を樹立。2021年4月からNPO法人かがやきプロジェクト所属の陸上競技選手。WPA公認2021ジャパンパラ陸上競技大会では5m01の記録を出し、世界ランキング13位に。

この記事の写真一覧はこちら