乳がんで余命2か月と診断 みんなに愛される寺の看板犬「ひめちゃん」
愛らしい表情としぐさでみんなに愛されているひめちゃん。
愛らしい表情としぐさでみんなに愛されているひめちゃん。
「ひめちゃん、今日もかわいいね」「ひめちゃん、一緒にお参りしようか」
そうやって参拝者に声をかけられているのが、香川・小豆島にある本覚寺で暮らす犬「ひめちゃん」です。人懐っこくて性格も穏やかなひめちゃんは、まさにみんなの“おひめさま”。ひめちゃんに会うためにお参りに来る人や、おやつを持って参拝に来る人もいるほどです。そんな彼女が余命2か月と診断されたのは、突然のことでした。
「夏ごろから、ときどき元気がないなと感じることがあったんです。年齢のせいかと思っていましたが、ある日激しいけいれんを起こして、慌てて病院へ連れていきました。それでもすぐには何の病気かわからなくて、乳がんと診断されたのが8月の終わり。肺にも転移していることがわかり、余命2か月だと告げられました」
がんのために高カルシウム血症になり、食欲不振、嘔吐、倦怠感などの症状が出るようになったひめちゃん。毎週のように三木町の病院へ通い、点滴を打てば回復するものの、また1週間ほどすると調子が悪くなり、また病院で点滴……そんな闘病の日々が続いています。
「ひとつ救いなのは、獣医さんいわく『骨に転移していないし、本人(犬)に痛みはないだろう』ということ。痛がっていると、こちらもつらいですが、調子のいいときは本当に元気そうにしているのでそれが唯一の救いですね。これからは、好きなものを食べて好きなことをして、少しでも長生きしてもらいたいです」
ひめちゃんと住職との出会いは8年前。姫路に住んでいる信徒さんの紹介で当時2歳のひめちゃんの写真を見てひと目で気に入りましたが、当時ひめちゃんの世話をしていた人は「譲りたくない」とひと言。しかし欲しがっているのが寺の人だと知ると「それならば」と譲ってくれることになりました。聞けば、ブリーダーの元でいじめられているのを見かねて保護したばかりだったそう。またすぐに住まいを移すのはかわいそうだと思って断りかけたのを、寺の人なら大切にしてくれるだろうと、譲ってくれることになったのです。
ひめちゃんの特技は“おねがいのポーズ”。おやつがほしいとき、散歩に行きたいとき、構ってほしいときなど、何かしてほしいことがあるときによくするそうです。
このポーズが「手を合わせてお参りしているようだ」と信徒さんたちの間でも話題に。「お経を唱えているとき、木魚のリズムに合わせて“おねがい”したこともある」と住職が教えてくれました。
人間に対してはまったく怖がることなく、広い境内で迷っている参拝者を案内するような行動を見せるほど賢いひめちゃん。その強い好奇心があだとなり、一度自宅の床下に入り込んで出られなくなってしまったことも。「2~3日帰ってこなかったので心配して、まさか自分たちの足元にいるとは思わず、自治会放送まで使って探しました」と住職は当時のエピソードを話してくれました。
これまで家族やお参りに来るたくさんの人を笑顔にしてくれたひめちゃん。残された時間は長くはないかもしれませんが、一日一日、今も大切な思い出を残してくれています。