週1~2回の店舗営業日、朝10時の開店前から、県内外より買い求めに来る人の行列ができ、早い時で午前中には完売してしまう人気のパン屋が、岡山県奈義町にある。

雄大な那岐山に惹かれその麓で店を構える。

もちふわ食感で子どもから高齢者まで食べやすいように作られているベーグルは、一度食べたら病みつきになる味わい。口コミで話題となり、通信販売も即完売だ。

ベーグルを中心に様々な種類のパンや焼き菓子も作られている。

小さなパン屋ができるまで

周囲を田んぼに囲まれた場所に、小さなパン屋「Atelier Nico+(アトリエニコプラス)」はある。その店主、田中麻衣さんは2児の子育て中の母親だ。学生の頃にパン屋でアルバイトしたことがきっかけでパンを好きになり、卒業後も保育士として仕事をしながら大手クッキングスクールのパン教室に通っていた。

結婚後、夫の転職を機に仕事を辞め、夫の職場から通える距離にあった、自然豊かな奈義町に惹かれ家族で移住。設計士である夫がパン教室を開けるスペースを兼ね備えた家を設計し、自宅でパン教室を始めた。

子どもの夏休み期間中に開かれたパン教室。

教室に通う生徒や友人達から「販売をして欲しい!」と言われ悩んだ末、子育てしながら自分のペースで製造出来ると思い、自宅庭の一角に店を構えることを決意。これまた夫が店の設計をし、2.5坪の店を2017年にオープンした。

開店情報は店頭の看板かSNSでチェックを!

ベーグルのイメージを変えたい

色々なパンを作る中で、ベーグルの成型の楽しさにはまり「硬くて食べにくいというベーグルのイメージを変えたい」との思いから、ベーグルを中心に販売することを決意。

2日間かけて仕込みをし、販売する日は朝の2時半に起床して焼き上げ、個包装等の作業を行い、多い時で1日350個程のベーグルの準備を田中さん1人でこなす。

焼きたてのプレーンベーグル

自分のペースで作れる為、近くの物産店に置いてもらったり、通信販売でも「通パン」と題して販売を始めたりした。通パンは、焼き上げた物を冷ました後に瞬間冷凍をし、そのままクール宅急便で発送。自宅で解凍し焼くことで、出来立ての味を楽しむことが出来るという。

1つでも多くの人の手元に

通パンは販売と同時に完売するほどの人気ぶり。始めた頃は、一人一人とメッセージのやり取りをして受注していたこともあったが、思い切ってネットショッピングの手法へ切り替えた。すると効率は良くなる一方、リピーターが購入しづらい状況も生まれてきたそう。

通パンでは冷凍品を扱うため、集荷時間や1人で行う梱包作業など、様々な面から対応できる数に限りがある。
色々な悩みがある中、1人でも多くの人の手元に届くようにと、田中さんは販売する日によって種類を替え店舗の営業日を増やす等、試行錯誤をする日々を過ごしている。

1つ1つ梱包する田中さん。

「身体に優しい」をモットーに天然酵母を使い、時間をかけ一つ一つ丁寧に作り上げるベーグル。「体力の続く限り作り続けたい」と田中さんは語る。

袋を開けた時に、ベーグルの良い香りを感じてもらい、笑顔がさらにプラスされニコニコになれますようにとの思いから名付けられた『Atelier Nico+』。そのパンをぜひ一度手に取ってみて欲しい。

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