香川県・ゲームといえば、2020年4月に全国で初めて施行したネット・ゲーム依存症対策条例(以下、ゲーム条例)。全国的な話題となりました。

そんな香川県で、「香川が、ゲームを取り戻す」というキャッチコピーを掲げたイベント「Sanuki X Game」が、7月10日に高松市の商店街で開催されました。イベントを企画したのは県内の学生やゲームクリエイター、商店街の店主らで作る団体、「S・X・G」。今回、中心メンバーである渡辺大さんに、イベントを開催した経緯や、狙いについて聞きました。

体験型からトークまで 多くの人が訪れる

イベントでは、学生がプログラミングしたゲームを体験できるコーナーや、うどんの湯切りを活用したゲーム、制限時間内にイベントをいくつクリアできるかを競うチャレンジといった体験型のイベントはもちろんのこと、eスポーツの世界王者のトークライブやゲーム依存症の当事者や、専門医らが意見を交わしたトークイベントも開催されました。

香川県ならではの「うどんの湯切り」を活用したゲームも

なかでも魚を網ですくい、ゲームのように記念撮影ができるイベントには多くの親子連れが参加。子どもたちの笑顔が印象的でした。

高松東魚市場から提供された魚を捕まえ、あの「人気ゲーム」のように記念撮影

条例をきっかけにゲームと街について考える

「ゲーム条例の出来事があったときに、まさにゲームとこれからの生活のことをもっと街ぐるみで考えないといけないなと感じた」

主催団体「S・X・G」の中心メンバー 渡辺大さん

ゲーム条例と対立しようと活動しているわけではないと話す渡辺さん。条例をきっかけに悪い面はピックアップされた一方で、ゲーム技術・エンターテインメントとしてのゲームとの前向きな接点、未来についてはあまり誰も話していないと感じたそうです。

「香川県って良くも悪くもゲーム依存で1回話題になったし、あの出来事(ゲーム条例)があったことで、ゲームをどう扱うかみたいなことに関して、ゲーム好きな人だけでなく街のみんなと話しやすい空気になった。だから、一見『世界で一番ゲームに不自由な香川県』に見えるんだけど、実は『みんなでゲームと街のことを一番考えている香川県』みたいな。そういうストーリーをつくろう、みんなで1つお祭りを作っていこうと思ったのが最初」

ゲーム好きのためだけのイベントではない

渡辺さんはイベントをデザインするにあたって、ゲーム好きな人がゲーム好きのために開いたイベントと受け取られないよう、気を付けたといいます。

「ゲームをどう守るかみたいな、ゲームに限定された話じゃなくて、どうゲームを生活に受け入れていくか、あたらしい街を作っていくかという話だと思う」

協賛企業を見るとゲーム関連の企業はもちろんのこと、「高松東魚市場」など、一見ゲームイベントには関係なさそうなところが目に留まります。

高松東魚市場の協力で例の森の釣り堀が出現

「高松東魚市場さんみたいな一見ゲームと接点がないようなところにスポンサーで来てもらって、ゲームとの接点を見つけてやってみて、人が集まって喜んでもらえたことは大きな成果なのかなと思っています」

年に1度の学園祭のように

「1年に1回はこの規模のイベントは絶対にやっていきたいなと思っている。学園祭のイメージなんですよね」

今回のイベントの出発点は、県内の技術系の学校に「普段作っている作品を一緒に持ち寄りませんか?」という提案をしたことだったそうです。

「街の人達に自分たちの活動を知ってもらいたい、他の学校の学生や社会人と交流することで学生に良い経験をして欲しいっていうニーズはあるけど、先生たちも忙しいからそんなの企画するまでの余裕なんてなかったという話をしてくれた。だから、年1回、ゲーム技術っていう切り口で学園祭みたいな場をこちらが用意するから、皆さんの成果を持ち寄ってもらえませんか?という話をした。きちんと制作している意欲の高い学生さんが集まれば、優秀な人材を採りたいゲーム企業さんは興味を持つ。企業さんがくることで社会人クリエイターも注目するようになる。人が人を呼んで、学園祭のように様々な作品が集まる魅力的なイベントができると思いました」

「今後もこのゲームの学園祭を続けていくことで、出会える場が生まれて、技術がある学生さんとかはインターンだったり、仕事みたいなチャンスと出会えたらいいと思うし、学園祭にただ遊びに来てくれる、参加者になる家族連れさんとかいろんな人が、こんなイベントが年1回あって楽しい、めっちゃ面白いって思ってくれたらいいです」

大勢の親子連れがイベントに参加

また、月に1回程度、IT技術、ゲーム技術の人たちの合同勉強会のようなものも予定しているそうです。

「(合同勉強会で)年に1回の大きなイベントの時にどんな遊びをチャレンジしてみようかとか話していく中で、作り手側のメンバーがゆるやかに増えていって、みんなが当事者になればいいなって思っています」

「僕たちだけでやっています」から、「みんなが作り手です」に。改めて学園祭のつもりで参加者側、作り手側を1年間で増やしていきたいと、渡辺さんは今後の意気込みを語りました。

子どもたちが作った妖怪が商店街に出現!

今回のイベントでは子どもたちが作った妖怪がARで商店街に出現するなど、イベントに関わる人が増えるような試みがみられました。年々イベントに関わる人が増えていき、イベントを街のみんなが自分事化し、ゲームとの向き合い方を考えたとき『みんなでゲームと街のことを一番考えている香川県』となっていくのかもしれません。

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