香川県高松市の「ゲストハウス屋島」。ここに泊まると、3匹のかわいらしい猫と、温かく柔らかい夫婦が出迎えてくれ、ゆったりとした時間を過ごすことができます。かつてうつ病を患っていたというオーナーの祝章子さんは、夫の聡さんと猫と一緒にゲストハウスを営む今が「人生のベスト」なのだと話してくれました。

猫と暮らすゲストハウス

ゲストハウス屋島は、祝さん夫婦が結婚を機に引っ越してきた空き家の一部を宿にして、2019年4月に営業を開始しました。最大の魅力は、なんといってもかわいらしい3匹の猫たちです。

一室でくつろぐ3匹の猫

ゲストハウスオープン当初からいるのが、3才のミルク。落ち込んでいる人がいるとそっと近くに寄り添う、優しい性格です。夜はいつも縁側で外を見張るなど頼もしい一面も。煮干しに目がない、「煮干し中毒」なんだとか。

ミルクは煮干しが大好物

2才のクローバーは、感情表現が豊か。宿内の障子が破れている箇所は、すべてクローバーの仕業で、章子さんがつけたあだ名は「破壊神」。しかし、3匹のなかでは唯一、寝ているときに章子さんの布団の中に潜ってきてくれるかわいい存在でもあるのだそうです。

どこでもくつろぐクローバー

そして4月末にやってきたばかりなのが、生後3か月のポタリー。3匹の中で最も肝が据わっていて、ほかの2匹が嫌がった入浴も平気なんだそう。取材のときも、元気いっぱい、年上猫たちに「遊んで」と言わんばかりに絡んでいました。

よく食べてよく動くというまだ小さなポタリー

宿をオープンして2年、今では、3匹に会いに来るのが目的の宿泊客も多いのだとか。「私たちは夫婦と猫の5人家族です」と、章子さんは笑顔で話します。

宿泊客がイラストをプレゼントしてくれることも

人生を急回転させた出会い

実は章子さん、もともとは関東に嫁いでいましたが、一度離婚を経験しました。その後、さまざまストレスが重なってうつ病を発症し、高松市の実家に帰って3年ほど療養を続けていました。

ゲストハウス屋島 祝章子さん

「仕事も行ってみたんですけど、しんどくて辞めたりして。この先どうやって生きていこうかという、どん底でした。そんななかで主人と出会って、人生が急回転したという感じがしました」

聡さんが住んでいた屋島で暮らすようになってから、自然と海、そして聡さんの穏やかな人柄に癒され、症状はどんどん快方に向かっていったそうです。そして2人で引っ越し、始めたのがゲストハウス屋島。章子さんにとっては、これまでの人生にはなかった、新しい仕事の形でした。また、3匹の猫と巡り会えたのも、猫好きの聡さんが里親を募集する人や、知り合いから譲り受けてきたからでした。

3匹の猫との出会いも、夫の聡さんがきっかけだった

章子さんの人生は、夫の聡さん、そして子どものような存在だという猫たちと出会って、大きく前を向いたのです。

「今までの人生の中で、今がベストです。テレビ番組の『人生の楽園』を実践しているみたいな感じですね(笑)」

ほっとしてもらえるような場所に

宿内には陶芸体験ができる部屋も

うつ状態のときには考えられないほど、今はやりたいことがいっぱいだと語る章子さん。新しいゲストハウスの立ち上げを検討したり、部屋の一部を猫カフェにしようかと考えたりするなど、新しいアイデアがたくさん湧き出ています。

「こんな空間ですけど、あとで振り返って、猫がいて、おばちゃんがいて、みたいなとちょっとでも思い出してくれるような宿でありたいなと思っています。落ち込んでいるような方にもほっとしてもらえるような場所を目指します」

ゲストハウス屋島 祝章子さんと夫の聡さん

ゲストハウス屋島を訪れた際には、愛くるしい猫たち、そして人生を明るく生きる夫婦の温かさに触れてみてはいかがでしょうか。

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