雑誌やテレビ番組などで、古民家カフェが取り上げられているのをよく見かけませんか?

岡山県倉敷市玉島にある古民家カフェ「cafe 菜彩(さいさい)」も気になるお店のひとつ。地図で調べると、周りには名所もなければ大通りに面しているわけではなく「なぜこんなところに?!」と興味を引きました。

「なぜここに?」の理由と魅力などを紹介します。

いったん通り過ぎてしまいそうな、風景に溶け込んだお店

cafe 菜彩(倉敷市玉島黒崎)

cafe 菜彩を初めて訪れるときには、目印となる看板がないので注意してください。気付かず通り過ぎてしまいそうになります。

「看板があればいいのに…」

そう思うかもしれませんが、昔ながらの家々が立ち並ぶ場所に目立つ看板が「ドーン」とあったらどうでしょう。風景に溶け込むのが古民家カフェっぽくないですか?

築100年以上の建物を改装していて、外観はモダンな佇まい。分かりやすい目印は煙突です。なお、cafe 菜彩へ訪れる際には、前日までに予約が必要です。

内観も期待を裏切らない!細部まで魅力たっぷり

店内は、こぢんまりとした隠れ家要素のある空間で、広い土間だった場所をカフェに改装し、席は全部で4卓。住居の一部をカフェとして開放しています。お店の至るところにある置物もかわいくて目が行きます。

※2021年2月現在は、新型コロナウイルス感染症拡大対策で1卓減らし、全3卓

置物から食事まで季節を感じられる

畑から食卓へ、野菜たっぷり月替わりランチ

メインだけではなく、小鉢ひとつひとつも丁寧に作られている

メニューは月替わり、1種類のみ。1,200円(税込)でミニデザートとドリンク付きです。2月のランチは3種のシュウマイがメインでした。食後にはうれしいドリンクとスイーツ付き。

和風のカップやお皿は、建物を改装するときに蔵から出てきたものだそう

カフェのみの利用もでき、午後2時30分から午後5時の間がカフェタイムです。本日のケーキやホットサンドがあります。

いろいろなことが重なり、地元玉島へ

できるだけ畑から採れた野菜を使い身体にやさしいランチを食べられる、cafe 菜彩。食べるだけではわからないお店の魅力を、オーナーの梅本さんに聞きました。

cafe 菜彩のオーナー 梅本智佳子さん

──お店を開いた経緯を教えてください。

梅本(敬称略)──
玉島に引っ越す前は福岡にいました。夫が転勤族で、これまで9回の引っ越しをしているんです。子どもが高校生になったので落ち着いた生活をと思い、住みやすかった福岡で家を買って住んでいました。ところが、熊本地震と夫の倉敷市内への転勤をきっかけに、玉島の地に引っ越そうかなぁと。実は、私の実家は玉島なんです。

──では久しぶりの玉島ですね。だいぶ変わりましたか。

梅本──
そうですね。30年ぶりの玉島です。道が変わっていますね。ただ、1年に1回は帰って来てはいました。そのたびに新しい道はできていましたけど、昔に比べだいぶ変わりましたね。帰ったら玉島の商店街にある、友だちのお店に集合していました。福岡の生活もよかったんですけど、玉島の実家もあって母もいるし、姉もいるし、夫の転勤が倉敷市内になったし、震災もあったしで福岡の家を手放してこちらに来ました。

古民家を改修する段階でお店をしてみたくなった

玉島には珍しい煙突のある建物

──この家は、どのようにして見つけたのですか?

梅本──

玉島に帰ってくるのにあたり、古い物件がいいかなぁとインターネットで探していました。たまたま見つけた建築会社にメールで問い合わせたら、すぐに返事が来て。「古い物件もあるのでぜひ」と言われました。それで最初に見た物件がここだったんです。他の物件も見せてもらったのですが、なかなか車が入りにくくて場所的に難しいこともありました。でもこの家は道にも面しているし、お庭に木が植わっていましたけど、中も見せてもらっていいなぁと思って。実家からも近く、母の生活もほとんど変わらず暮らせることも決め手になりました。

2017年の夏に物件を見て、年越しは福岡でして、それからこの家に来たのが2018年の6月です。夫も私も想像以上にこの家が良かったなぁと思いまして、設計の段階でお店をしてみたいと建築会社の方に言ってみたんです。

暮らしとお店が両立できる建物に

──えっ!もともとお店をされるつもりではなかったのですか?

梅本────
そうなんです。ただ、「仕事を辞めたときには何かしたいな」とばくぜんと思っていたことを、設計の段階で伝えたら、あれよあれよという間に設計図ができて。「お店は毎日しなくていいです」とも伝えていたので、ふだんは家族も使う玄関としての設計になりました。

住居部分には薪ストーブがあって、建物全体を温めている

──では家族の方が、ふだん使われているのですね

梅本────
そうです。通常は家族の玄関として使っています。お店をしているときは裏から出入りしています。いまの駐車場になっているところは、立派なお庭でした。前の持ち主さんがきれいに管理をされていたのですが、駐車場が必要なことと工事のために、もったいないのですが庭木はすべて伐採しました。

建物は漆喰を塗り直していますが、あまり変えてはいないです。わりとそのままです。天井は明かりが差すように半分変えました。玄関の上がり台もそのままです。ただキッチンは配管を通す関係で一段あげ、結果的にワンステップになって家に入りやすくなったのでよかったです。

──古い建物は寒いイメージがあるのですが、暖かいですね。

梅本────
住居部分の暖房は薪ストーブだけです。カフェの部分までは薪ストーブ温められないので、灯油ストーブとエアコンを使用しています。

──それで、お庭に薪があったのですね。謎が解けました。

好きなもの・やりたいことが詰まった店内

──お店に置いているものもかわいいですね。

梅本────
これ、粘土なんですよ。

本物に見える粘土の置物

──え、まさか!と思ってまじまじと見ても粘土とは思えません。色合いや形、質感(見た目ですが)まで細かく、まるで本物です。

梅本────
月に4回は粘土の教室をしていて、私が教えています。

他には、キャンドルの先生にお願いして月に1回ボタニカルキャンドルを作るワークショップをしています。午前の教室の方にはパンのランチを、午後はケーキをお付けしています。パンつくりは習いに行っていて、天然酵母のものを勉強中です。実際にお出しするのは、天然酵母のものや普通のパンなどさまざまです。教室を開いて、ランチの営業をしていない時もお店を有効に使えるようにしています。

──椅子に敷いている倉敷ノッティング(※)もすてきですね。

※民藝運動を熱心にし、倉敷民藝館初代館長を務めた外村 吉之介(とのむら きちのすけ)が生みだした織物

梅本────

今あるものは買ったものですけど、私が作ったものもあるんですよ。

オーナーの好きなもの・やりたいことが詰まっている

倉敷ノッティングとは違いますが、「赤穂ギャベ」というものも習っていてお店で使っています。たまたま織り機を持っていたこともあって習い始めました。習いに行くときは織り機をたたんで持っていきます。他に「金継ぎ」「焼き物」「ステンドグラス」もやりたいですけど、時間がなくって…。

温かみのある古民家カフェ

初めて訪れたときに一目ぼれして、「多くの方に伝えたい!」と思いがあふれたものです。ランチだけではなく、建物や置物まで魅力たっぷりと感じたのは、梅本さんの好きなものとセンスが詰まっているからだと取材をして気づきました。この思い、訪れたらわかるかもしれません。

そして、まだまだたくさんのことに挑戦したい梅本さん。訪れた1年後には、またさらに新しいことを始めていて、作品がお店にも飾られているかもしれませんね。これからも進化し続ける予感がする、cafe 菜彩から目が離せません。

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