おいしいコーヒーではなく「良いコーヒー」を

科学的根拠にもとづいたコーヒーは、淹れ方や食器にもこだわります

甲田:
コーヒー教室ですか?

新田亜希:
いま北房で年間全5回の講座、コーヒーとはどういうものなのか、どうつくられているのか。「システム珈琲学」に則って、実践を交えながらお伝えしています。

新田智:
最近は、消費者さんも「本質」に向かっているように思います。
うちのコンセプトは、「おいしいコーヒーではなくて、良いコーヒーを届ける」なんです。「おいしい」は嗜好ですよね。どうしても好き嫌いは十人十色になってしまう。でも、新鮮かつ、正しい理論に則ったコーヒーは、やはり「良いコーヒー」なんです。

新田亜希:
私も主人も、朝から晩までコーヒーばっかり飲んで。もうコーヒーがないと生きていけない身体になっているんです(笑)。だから自分たちで「良いコーヒー」をつくりたいし、皆さんにも飲んでもらいたいです。

新田智:
ここはカフェではなく、焙煎した豆を販売するところですので、来てもらったら、たくさん試飲してもらう。そのなかで気に入ったものがあれば、買ってもらう。そういうお店です。

新田亜希:
宣伝をしてこなかったので、もとをたどれば本当に最初のお客さんに行きつきます。その方の口コミから口コミを呼んで、ありがたいことにどんどん広がって、今があります。

焙煎工房にズラリとならぶ、さまざまな種類の豆たち

甲田:
これからについてはいかがですか?

新田亜希:
いまとても良いバランスなのですが、でもいつか子どもが巣立った後に、「えいや!」とお店ができたらいいな、と思っています。死ぬまでに……(笑)。
もともと、自分でつくったお菓子を出すようなお店が持ちたかったので。

そんなに器用なタイプではないので、「お店だけできたらいいか」という気持ちです。そうすれば、「ああ、充分幸せだったな」と思えると思います。どうなるかはわからないけど。このことに関しては、悔いのないように生きていたいと思います。
いつもは愚痴ばっかりですが(笑)。

甲田:
いやいや、そんな。

新田亜希:
でも、「本当はしたかったのに、できなかった」という後悔のほうがよっぽど怖いです。

甲田:
毎日忙しいけど、「コーヒーのある生活」を楽しんでいらっしゃる。

新田亜希:
やっぱり好きなことなので。地域のこと、子育てのこと、べつの仕事のこと、それぞれとうまくバランスを取りながら。

デュモンさんの名前の由来は、飛行家のアルベルト・サントス・デュモンから

途中から取材なのか何なのか、ただ居心地のいい空間、おいしいコーヒーに酔っていました。新田智さんと亜希さんとご夫婦が織りなす、代替の効かない「デュモンさん」としか言いようのない空間。いつまでも話が尽きませんでした。味はもちろん、少しでも余韻を味わいたくて、帰りに深煎りのマンデリンを購入させていただきました。お2人でされていますので、訪れる際には事前のアポイントをよろしくお願いします。

聞き手:甲田智之 写真:石原佑美

この記事の写真一覧はこちら