2020年10月に岡山県津山地域に設立した地域商社「曲辰(かねたつ)」。社名の由来は、さまざまな角度から材を見るために大工が使う曲尺(かねじゃく)の「曲」、日時を示す「辰」。「曲」と「辰」を組み合わせると「農」になります。地域の農業と生産者に特別な思いを抱く岡田さんの挑戦とは。

「農業生産者のために」祖父の魂を受け継ぐ

津山市が公募した地域商社の代表として2020年10月に着任した岡田裕治さん。津山市内で製粉業を営む株式会社半鐘屋の代表も務めています。応募の動機は「農業生産者に恩返しをしたい」。農業生産者に特別な思いがあるようです。

「祖父の影響が大きいです。米や大豆の製粉を生業にしているので、農業生産者がいないと商売が成立しません。農業生産者に足を向けて寝られないと、よく祖父から聞かされました。祖父は昭和時代に、自社の利益を損なうと知りながら、地域のためと大型スーパーの誘致に関わりました。この祖父の魂を受け継ぎ、地域のため、農業生産者のためという強い思いがある」と岡田さんは言います。

農業生産者からの質問に答える岡田さん

地域農産物の良さを知るからこそできる

この思いは、農産物に新たな価値を付けて販路拡大を目指す地域商社の目的と一致したそうです。 

「津山地域で生産される農産物の品質の良さは、これまで手掛けてきた商品から実感しています。そこで和菓子、酒や味噌などの原料になる加工用米のブランド化を目指しています。加工用米は契約栽培のため価格が安定し、一定金額の収入が見込めるといった強みがあります」と今後を見据えます。

1月31日、大篠公民館(津山市)で開かれた農業生産者向けの会合に出席。地域商社「曲辰」が取り組む、加工用米のブランド化を説明した。

100%地元産の商品づくりを目指して

1月29日、津山市内のビール酒造会社を訪問。地元産100%ビールの製造販売を目指す

「地域の農産物を商品化するまで、津山地域内で完結したい。企業が持つ加工技術や設備、体制を生かしながら、需要に見合った農産物を安定して供給する仕組みを、皆さんと協力して作りたいです。例えばおじいさんが栽培した米を、地域内の企業が買い取り、加工することで100%津山産の商品ができる。孫がそれを食べて成長し、祖父が作った農産物が使われていると知ることで、地域に誇りを持ったり、後継者に育ったりするかもしれません」と力を込めます。

ビール製造会社の社員と話す岡田さん

農業生産者の所得向上と持続可能な農業を

「地域農産物の米・麦・ぶどうなどは、1年に1回しか収穫できません。焦る気持ちを抑えながら2年先、3年先を見据え、適切な時期に適切な行動を取りたい。そして、地域の農業生産者の所得向上と持続可能な農業を目指していきたい」と新たな挑戦に向け、決意を語りました。

1月29日、津山市内のビール麦畑を視察

岡田さんと社員のみなさん

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