街全体を宿に見立てる。目指すは日本の「アルベルゴ・ディフューゾ」

この「多喜屋」は、菅さんが抱いてきた構想を実現するための第一歩。菅組による仁尾の街並み再生プロジェクト「仁尾縁(におよすが)」として、今後も長期的に取り組んでいきたいといいます。

「古民家を少しずつ再生させ、外から多くの人に来ていただくことで、地元の人たちとの交流が生まれ、新たな価値も育まれていく。そんな“縁”を紡いでいけたらと思っています」

「多喜屋」のフロント機能を持つ建物「表店(おもてだな)」。「仁尾縁」の暖簾が目印

新しい地域のあり方を模索したいと語る菅さんが描く未来図は、「アルベルゴ・ディフューゾ」。1980年代にイタリアで誕生したもてなしの形で、近年は日本でも注目されています。過疎地の集落に点在する歴史的な建物を宿泊施設として改装し、街全体をホテルと見立てる考え方がベースとなっています。従来のホテルが一箇所で完結しているのに比べ、レストランやショップなども街中に分散させているので、旅人は散策しながら暮らすようにその土地を堪能できるのが最大の魅力です。

「仁尾には、三豊市で唯一残っている銭湯や、おばあちゃんが営む昔ながらのパン屋など、地域の人に愛されている場所がたくさんあります。歴史あるお寺も多く、父母ヶ浜など自然も豊か。今後は宿を増やすだけでなく、街の人たちとも連携をとって、取り組みを深めていきたいですね」

生まれ育った故郷の活性化を願う菅さんの熱意が、言葉の端々から伝わってきました。「仁尾縁」のプロジェクトの今後に、心からのエールを送ります!

キッチンも完備されていますが、朝食は予約すれば提供可能。素朴で心のこもった地元の幸が味わえます(写真提供:菅組)

「今後も歴史ある商家や住宅を、魅力的な宿や店へと再生していきたいと思っています」

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