ただの飛沫防止ツール以上の可能性を秘めている

 時代劇などで見るような、お公家さんが扇子で口を隠すようなシーンを想像する「うちわのみ」。齊藤さんと矢野さんのイメージはさらにふくらんでいく。表面を広告媒体にすることはもちろん、会食が楽しくなるような口を描いたり、動物の顔にしたり。たとえば、手で持つところに感熱シートを付けたら発熱を感知することができるかもしれない。飛沫を受ける内側の面がPCR検査キットになるかもしれない。会食シーンに限らず、誰かがまた次につなげてくれる可能性にも期待をしている。

飲食店への普及方法など、ディスカッションは尽きない。左/矢野さん、右/齊藤さん。

 建築家といえば、建物を設計する人だと思い込んでいたが、齊藤さんはもっと広くとらえていた。「たとえば、知らない人が設計した劇場や映画館が今は入れなくても、何かぼくが作ったもので人々がそこに入ることが許され、それが世界中に広まったら、ぼくは世界中の劇場や映画館をデザインしていることになると思うんです」。

みんな「早く元の生活に戻りたい」

 齊藤さんは言う。「これは決して会食を助長するものではありません。少人数でも同席の人を思いやるマナーを配慮して、マスク会食よりは『うちわのみ会食』が浸透することで、うちわ業界も飲食店も応援したいんです」。

同席者への配慮だけではなく、飲食店スタッフへの思いやりツールでもある

 1都3県に緊急事態宣言が再び発令され、会食そのものが不謹慎と感じる人もいるかもしれない。しかし、コミュニケーションの場としての飲食店は、私たちの生活に欠かせない大切な場所だったはずだ。同じように香川の伝統工芸、丸亀うちわも花火や祭りなど日本の文化に欠かせない。

「またうちわを作りたいから、今、これをやるんです」(矢野さん)。
「そう。ぼくだって本来の建築仕事をしたい」(齊藤さん)。

 みんな以前の日常に戻りたい気持ちは同じ。だからこそ、それぞれが今できることをする。そんな姿に熱い思いを感じた。