JR瀬戸大橋線・宇野みなと線の早島駅前にある白壁つくりの建物、早島町観光センター。
これまで町営でしたが、早島町がプロポーザル方式で指定管理者を募集し、10月1日から株式会社キッカワが管理・運営しています。

早島町観光センター

準備期間を経て、11月13日にリニューアルオープン。コンセプトは「人々がつながり、ふれあい、共に成長できる場所」です。

たまごかけごはんやプリンが食べられる「こひよ」、瀬戸内のおいしいものが集うセレクトショップ「ひまりや」、テイクアウトの「ひまりやレモネード」など、これまでになかったカフェやショップが入り、岡山の魅力が体感できる場になりました。

また、子どもに大人気の「だがしや☆ひまりや」、人がつながる小さな図書館「まちライブラリー」もあり、観光客だけでなく早島で暮らす子ども・大人にとっても憩いの場になっています。

吉川若菜さん

株式会社キッカワ・専務取締役 吉川若菜(きっかわわかな)さんに、早島町観光センターリニューアルオープンへの思いを聞きました。

町民も気軽に訪れられる場所に

株式会社キッカワの主な事業は、倉敷市水島コンビナートエリアをはじめとした全国の石油化学プラントの定期工事やメンテナンスです。高い専門性や長年の経験から、全国から依頼がくる会社になりました。

地元・倉敷に恩返しをしたいという考えから、2012年からニュースサイト「倉敷経済新聞」を運営し、「街の記録係」として倉敷市・早島町エリアの情報を細やかに発信してきました。

吉川さん自身、早島町民歴は20年以上。その分、町への思い入れがあります。

早島町観光センターの運営について「『観光センター』という名前ですが、観光で来られる方だけでなく、町民も気軽に利用できる場所にしたかったんです。短期的な賑わいづくりよりも、長期的な過ごしやすさと安心感を目指しています」と話す吉川さん。

セレクトショップ「ひまりや」は、観光客向けのお土産だけでなく、キムチや調味料、牛乳など、「こんなのあるんだ!」と日常に取り入れたくなる食材がたくさん並んでいます。
美星町直送の野菜販売コーナーもあり、人気です。

ひまりやの商品 日常使いしたくなるものも並ぶ

カフェスペースがある「こひよ」は、株式会社卵娘庵(らんこあん)が運営しています。
井原市芳井町の自然豊かな環境の中、平飼いでストレスなく育った母鶏たちが産んだ卵や、手作りプリン、焼き菓子などのラインナップ。イートインすることもできます。

こひよの手作りプリン

入口にある「ひまりやレモネード」はテイクアウト専門。
生レモンを絞って作った冷たいひまりやレモネードのほか、はちみつ入りのホットやティーレモネード、ホットジンジャーなどがテラス席でくつろぎながら味わえます。

おすすめ!ひまりやレモネード。「私が心からおすすめできる商品ばかりです」

そして、早島町といえば、い草・い草製品の町。
江戸時代には「早島表(はやしまおもて)」という名前で全国に出荷されるようになり、明治以降、模様を織り込んだカラフルな「花ござ」をつくる工場が増えました。しかし、生活様式の変化により需要が減少、平成12年には早島町のい草栽培面積はゼロとなりました。

畳のいい香りがする展示室

そんな早島町の歴史を紹介する歴史展示スペースには国産の畳が敷かれ、ゆっくりくつろげる空間となりました。

装飾家・能勢聖紅さんが手がけた、い草を使ったアート作品

建物の吹き抜けには、岡山市出身の装飾家・能勢聖紅(のせせいこう)さんが手がけた、い草を使ったアート作品が飾られています。

子どもたちの居場所づくり

特に子どもたちの居場所づくりにこだわったという吉川さん。
「将来まちを離れてしまったとしても、『戻ってきたい』、『自分もこのまちで子育てしたい』と思ってもらえれば、持続可能なまちになっていくと思うんです」と話してくれました。

全国に広がる、本と人とのつながりを生む取り組み「まちライブラリー」。 早島町観光センターには、絵本や子育ての本が並ぶ。

リニューアルオープンの準備期間中に、早島町内にあった最後の駄菓子屋さんが閉店してしまったことは、吉川さんにとって大きな衝撃でした。

「子どもたちの居場所が、まちからどんどんなくなっている・・・」

子どもたちが心地よく過ごせる場所をつくりたいと、寄贈された本を元の持ち主の思いとともに読める「まちライブラリー」や「だがしや☆ひまりや」が生まれました。

だがしや☆ひまりや

また、小学3年生~中学3年生の子ども向けに、「ニーニョスカード」を発行しています。「ニーニョス」はスペイン語で「子どもたち」という意味。
このカードを使えば、ドリンクやおやつが割引価格で購入できます。

子どもたちが気軽に楽しめる「子どもたちの居場所」になることを目指しています。

訪れた子どもたちが装飾をしてくれたという、ひまりやレモネードの看板

取材時、訪れた中高生に「ここに本があるから読んでいく?」、「また来てね」と細やかに声をかけていた吉川さんが印象的でした。

曜日ごとにちがう店舗が入る「貸しシェア店舗」も準備中とのこと。常に変化し、あたたかいニュースが生まれる場所になりそうですね。

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