JR倉敷駅近くに9月にオープンしたお惣菜店「kitchen森のくまさん」。
お弁当やオードブル、ランチタイム限定の定食などがお得に楽しめるお店です。

一時はお店をあきらめることも考えた、という店主の山下きくみさん。
開店の後押しをしてくれた倉敷市真備町への思い、平成30年7月豪雨災害当時のお話なども伺いました。

大切な場所を残したい
そんな思いから再出発したお店です。

居酒屋からリニューアルしたお惣菜店

JR倉敷駅南口からすぐ近く、くらしきシティプラザ西ビル2階にある「kitchen森のくまさん」。
以前「磯の家」という居酒屋があった場所に、2020年9月16日、お惣菜店としてリニューアルオープンしました。

西ビルのレンガ色に合わせて、赤を基調としたかわいらしいお店です。
真備町に住む職人さんと店主の山下さんがデザインを考え、たった2週間ほどでお店の外観を整えてくれたそうです。

お店のなかには揚げたての唐揚げやフライ、手作りのお惣菜が並びます。
開店時間からアルコールの注文もできるので、カウンターでチョイ飲み、お惣菜と一緒に昼飲みも可能です。

種類豊富なアルコール類が並び、居酒屋当時の面影も残されている店内

店の奥には掘りごたつ式のイートインも

お惣菜にお弁当、リーズナブルなランチメニューも

お惣菜、お弁当、オードブル、などいろいろなメニューがあります。お弁当は基本的に注文ごとにその場で手作り、作り置きはしないそうです。ウーバーイーツにも対応しています。
テイクアウトメニューのほか、11時30分からのランチタイム限定の定食もあります。
お弁当も店内で食べることができますよ。

名物「くらから」こと、鶏の唐揚げ

お弁当やオードブルの一例写真。値段や人数、好みで内容もカスタマイズできるそう

甘辛ソースが相性抜群の「うま唐揚げ定食」

おすすめの「うま唐揚げ定食」850円(税別)

kitchen森のくまさんには2種類の唐揚げがあり、こちらは甘辛タレをからめた「うま唐揚げ」です。名前からして美味しそう。
見てください、この唐揚げの大きさ。大きな唐揚げが4つ、お皿からはみ出しそうな迫力です。

カリッとした唐揚げに醤油ベースの甘辛タレは相性抜群

カリッとしてじゅわっとくる「甘じょっぱい」唐揚げ、クセになりそうな美味しさです。
もちろんご飯との相性も素晴らしく、お腹いっぱいなのにスルスルとご飯がなくなってしまいます。

お弁当やオードブルだけでなく、お得なランチにお酒も飲めるうれしいお店「kitchen森のくまさん」。
リニューアルしたお店のことや、居酒屋と真備町への思いなどを、店長の山下きくみさんに尋ねました。

真備の人たちの「大切な場所を残したい」

kitchen森のくまさん 店長の山下きくみさん

──kitchen森のくまさんのオープン以前は、同じ場所で居酒屋を経営されていたそうですね。開店当時の経緯などをお聞かせください。

山下──
もともとは、西ビル2階の同じ場所で「磯の家」、倉敷の商店街で「海鮮問屋かたつむり」の2店舗を経営していました。
「平成30年7月豪雨災害」「消費税の増税」と、なんとか持ちこたえていたのですが、新型コロナウイルス感染症の影響で、もう限界が来てしまって。
当初は2店舗とも閉めようかと考えていたこともあったんです。

お店の今後をどうしようか悩んでいたとき、真備町の知り合いに相談したらとても残念がってくれて、心配してくれました。
真備の人にとっても「磯の家」は特別な場所なので、「どうにかしてお店を残したい」と思い、お惣菜店として再出発することに決めました。

──真備町の方々と「磯の家」には、どのようなつながりがあるのですか?

山下──
平成30年7月豪雨災害当時、「磯の家」で物資を配ったり、真備の人が集まれる場所にとお店を開放していました。
もともとは真備町でボランティアの方と一緒に物資を配っていたのですが、そこで「みなし仮設」に住まわれている人やお年寄りが置き去りになっている、と感じたことがきっかけです。
みなし仮設は倉敷、笠岡、岡山と、真備町以外の場所に点在してしまって地域もバラバラになっていますから、当時は物資や情報がまったくなかったんですね。

「磯の家」を開放して、真備町のみなさんが集まれる場所を作り、物資や情報の提供を始めたんです。
ありがたいことに「物資がもらえる、会える、話せる」場所として口コミで広まり、たくさんのみなし仮設に住む真備町の方々に来ていただけました。

──「磯の家」での活動は、どのくらいの期間続けていたのですか。

山下──
「磯の家」の開放日は月に2回ほど、災害から1年半続けました。多いときで1日30人前後のかたが訪れてくれましたね。
集まった物資を配ったり、手弁当でサンドイッチやおにぎり、寄付されたお菓子を提供したり。
真備の人にとっても、開放日だけはおしゃれをして出かけるきっかけになっていたらいいな、と思って続けていました。
人からはよく、「なんでそこまでするの?」と言われましたが(笑)、当時はとにかくお腹を満たして笑ってほしい、その思いだけで無我夢中でしたね。

「磯の家」は、真備の人にとって「出かける場所、誰かに会える場所」になっていたのかな、と思います。

──「磯の家」は、真備町の人にとって心の支えのような場所だったのですね。

山下──
逆に、私のほうが真備のみなさんに支えられているんです

「森のくまさん」を再建するときも、看板から名刺、チラシ、内装なんかも全部真備の知り合いの方が手助けしてくださって、たくさん後押ししてもらいました。
お店のメニュー「くらから」も、まったく知らない真備町の人たちがTwitterで広めてくれたり、いまも毎日誰かしらがお店に顔を見せに来てくれたりして、こちらが元気をいただいています。
へこみそうになったらすぐに話に来てくれて、真備町の人たちの温かさに救われています。本当に、よいご縁をいただいたなと思います。

──今後、kitchen森のくまさんはどのようなお店にしていきたいですか。

山下──
そうですね、まだみなし仮設に住まわれている人のためにも、1日でも長くお店を続けていきたいです。
真備町の方が災害で経験したことを、いろいろな人に伝えていかないと、と考えています。
災害から月日が経ちますが、まだ真備町に戻れない人もいますし、そういった人が少しでもホッとできる場所になればいいな、と思いますね。

おわりに

お話を伺うなかで、山下さんのこんな言葉が心に残りました。
「真備の人って本当にみなさん温かいんですよね。どうして(看板やお店の外観など)こんなにまでしてくれるのかな、といつも感謝でいっぱいなんです」
それはそのまま、真備の人たちが山下さんに感じていたことなのだろうな、と思いました。

「磯の家」の開放日は、当時真備町を離れて避難する人にとって、どれほど温かく、心が慰められる場所だったことでしょう。
「磯の家」に救われた人がたくさんいたからこそ、いまのお店があるのだと感じました。

お惣菜店として生まれ変わった「kitchen森のくまさん」。
クラウドファンディングにも挑戦し、存続させようとしています。
お店が続いていくことで、倉敷の新名物(になりそうな)「くらから」とともに、さらなる交流の場になると素敵ですね。

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